なんとなく評判がよかったので、手を出してみました。
闘蛇編と王獣編で一度完結しているとは知らず、
4巻全てつながっていると思っていたので事の真相を知った時は驚きました。
だって、王獣編の結末は、あまりにもあっけないというか
そこで終わらせるの?!と叫びたくなったから……。
それでも続きがあるなら、と気にせず読み続けたのですが、
王獣編までのめりこんでわくわくしながら読んでいただけに
あの結末がショックで……正直、読んだ事を少し後悔しています。
けれど素晴らしい作品である事には間違いはありません。
重厚に作られた世界観は言わずもがな、
さすが文化人類学者だと唸らされたのは精霊の守り人シリーズでも同じです。
そして人の性、親子の愛、進むべき道への激しい苦悩と
それでもなお諦めずに道を探そうとする姿は本当に強くて美しいものだと思います。
多少伏線が回収されなかろうが全く気にならない程度です。
ただ……私には、エリンも、イアルも、そしてジェシですらも、
あまりにも「強すぎて」深くは感情移入ができなかった。
英雄を崇めるように彼らをすごいとみる事は出来ても、
心から愛しいと思える旧友のようには感じられない。
上橋さんの作品は一通り読んでいるのですが、
どれも「すごい」とは思うもののいまいち好きにはなれなかった理由が
獣の奏者を読んで理解できました。
人は、もっと弱くて情けなくて、逃げ出してもいい……。
その点、上橋さんは登場人物たちにたいして強くて厳しすぎる、と感じてしまう。
それがまた上橋さんの良さでもあるとは思うのだけれど、
私とは少々合わないのが残念です。
- 感想投稿日 : 2011年10月26日
- 読了日 : 2009年8月11日
- 本棚登録日 : 2011年10月26日
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