エマニュエル・トッドは
『最後の転落』(1976年)でソビエト連邦の崩壊を予測し、
『帝国以後』(2003年)でアメリカの凋落を予測し、
『文明の接近』(2007年)で「アラブの春」を予測した、
と言われる。
識字率・出生率・内婚率など人口動態から、アラブ革命の根底にある近代化民主化まで予見できた・・・・・と説明されても、予言者じゃあるまいし、だからどうした?という気がする。
彼は、『文明の接近』というタイトルから分かる通り、アメリカのWASPの保守的な政治学者サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』という見方に反論してる。
ハンチントンのようなグダグダした記述とは違い、統計的数値の裏づけをもって「イスラームと近代化は相容れない」という通俗的な見方に反し、欧米世界とイスラム世界の接近がすでに始まっている、と分析している。
これは、最近読んだエコノミスト誌の2500年の未来予測図と、近いものがあり、もしかしたら本当のことなのかもしれない。
これに対して親イスラエル派で、フランスの反イスラムの空気を煽っているフィンケルクロートとかいう野郎がやたらとトッドに噛み付いてるそうだ。
トッドはアナール派から影響を受けてるらしい。
でも、彼のことを、単純に「歴史学者」などとは呼べない。
むしろ、彼は人口統計学者であり、人類学者であり、社会学者であり、政治学者であり、お総菜屋であり、肉屋である・・・・・という説明が、いちばんシックリきた。
つまり、何でもアリなんだけど、ハンチントンみたいな保守的な政治学者や、ウォーラーステインみたいな時代錯誤のイデオローグとは違って、文学的な言葉をダラダラ述べてゆくダメな社会学者なのではなく、科学的な手法を使って計量・分析できる専門的な研究者なのだ。
彼は、自分は何と呼ばれても良いけど、哲学者と呼ばれるのだけはイヤだ、と言ってる。
そうだな。少なくとも彼には、哲学はない。
- 感想投稿日 : 2013年4月18日
- 読了日 : 2013年4月18日
- 本棚登録日 : 2013年4月18日
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