『かっこよく見えた。自分も何か、葛藤を抱えたかった。俊介の人生には挫折と呼べる出来事も、人生を呪うような悲劇もなかった。』
『では俺はどうすれば愛と呼べるのだろうか? 愛するには相手を知らないといけない。どうやって知るんだ? 沢山話して? でも、会話によって相手の内面を把握しうると思うのもまた、容姿だけで人を愛するのと同じほど軽薄ではないか。』
「見た目がちょっと良いからってあんな芝居、気持ち悪いよ」
「気持ち悪いかどうかはあなたの主観じゃないですか?」
「俺の主観はあなたにとっての客観だから」
『水口は時々笑顔を交えながら、それは、自分が真剣になり過ぎていることへの言い訳のように見えて、余計に真剣さが伝わるような言い方だった。』
『水口は断らない。
この時間は、自分に言い訳するために必要な時間だ。悩んだ末、押し切られたという体裁が欲しいだけだ。』
『水口は今でも俊介を愛している。囚われ、視界を狭められ、ただそれを信じ続けることで、それの存在を証明しようとする試みを愛というのなら。』
『水口は嬉しそうだった。「懐かしいな」と三回くらい言った。俊介も「懐かしいな」と二回くらい言い、京子は一回だけ「懐かしいね」と言った。』
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
前田司郎
- 感想投稿日 : 2018年4月17日
- 読了日 : 2018年4月17日
- 本棚登録日 : 2018年4月17日
みんなの感想をみる