我思うゆえに我あり 死刑囚・山地悠紀夫の二度の殺人

著者 :
  • 小学館 (2009年10月16日発売)
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感想 : 8
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2005年11月17日に大阪で姉妹2人を殺傷させた山地悠紀夫の人生を描いたノンフィクション。週刊誌の記者らしい読みやすい文章で、事件の仔細までリアルに述べられている。姉妹を襲った本当の理由は、山地が死刑に処された今となっては知る術もないが、何の落ち度もない、面識もない、前途有望な2人の若い女性の命が無残にも奪い去られたという事実は決して消えないし、忘れ去られてもならない。だが、山地自身について言うならば、自分を表現することが極めて不得手な人間だったと言えるのではないだろうか。しかも、周囲はそんな彼の特性を知ってか知らずか、彼自身を理解しようと努力しなかった。その為、自然と人の輪から孤立してしまう。孤立した山地を訓戒しようとすれば、人を信頼することを知らない彼は、「どうせ自分は理解され得ない」と臍を曲げ、自らの殻に閉じこもり、ワザと意に反する言動をとる。この循環を『不幸』と呼ぶならば、山地の人生はこの『不幸』の無限連鎖だったのではないかと思う。何とかして『不幸』の蟻地獄から抜け出そうともがいた結果が、自暴自棄ゆえの姉妹殺害事件だったことは到底許されるべきではない。しかし、山地を自己表現の未熟な人間にした出生や環境には一切の非がないと果たして言い切ることができるだろうか。山地悠紀夫のような犯罪者を生み出さないために我々が今できることとは、一体何なのだろうか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 長編
感想投稿日 : 2011年1月30日
読了日 : 2011年1月30日
本棚登録日 : 2011年1月18日

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