手持ち単行本は大正8年(1919)初版の岩波版です。旧字体なので、現代仮名遣いの青空文庫版を併読。
「古寺巡礼」というより、「古仏巡礼」の雰囲気が濃いです。ゆったりした時間の流れる感じは大正8年という時代のせいか、和辻哲郎という人物の持ち味なのか。小難しい思索ではなく、なるほど巡礼ですね。
大正から昭和にかけて多くの文学青年や画学生が、この本を懐に大和路を歩いていたと聞きました。今はもうそういうタイプの大和路好きはいたとしてもとても希少なんだろうなと思うといます。
下の引用は、現代の漢字かな遣いに直しました。
━ p.289 ━
(中宮寺の観音)彼女は神々しいほどに優しい「たましいのほほえみ」を浮かべていた。それはもう「彫刻」でも「推古仏」でもなかった。ただわれわれの心からな跪拝に価する――そうしてまたその跪拝に生き生きと答えてくれる――一つの生きた、貴い、力強い、慈愛そのものの姿であった。われわれはしみじみとした個人的な親しみを感じながら、透明な愛着のこころでその顔を見まもった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年11月2日
- 読了日 : 2017年8月27日
- 本棚登録日 : 2019年11月2日
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