エーミールと三人のふたご (ケストナ-少年文学全集)

  • 岩波書店 (1962年8月18日発売)
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“「そうかんかんにならないでおくれよ!」と、オートバイの乗り手はどなりました。「たいしたことじゃないよ。」
エーミールと教授くんはおどろいて、荷物のうしろからのぞき、「グスタフだ!」と歓声をあげ、運送屋の手おし車を一周して走りより、旧友にあいさつしました。
めんくらったグスタフは、道路にオートバイをねかせ、ちりよけめがねをひたいにおしあげていいました。「すんでのところで、ぼくは、ふたりの親友をこっぱみじんにひきとばすところだった!ぼくたちは、きみらを駅に迎えにいこうとしていたんだ。」
「運がわるいと、しょうがないな。」と、道ばたのみぞの中からいう声がしました。
グスタフは、とびあがって、オートバイを見おろしました。「ちびの火曜日くんは、いったい、どこに行ったんだろう?」と、彼は叫びました。「今までぼくのうしろに乗っていたんだが。」
彼らはみぞをのぞきこみました。そこに、ちびの火曜日くんがうずくまっていました。べつにけがはありませんでした。彼は宙に投げだされて、みぞの底の草の中に着陸しただけでした。彼は、友だちたちに笑いかけていいました。「さいさきがいいぜ。」そして、すくっと立ちあがって、さけびました。「あいことばエーミール!」
「あいことばエーミール!」と、四人は叫んで、なかよく歩きだしました。”[P.80]

「エーミールと探偵たち」の続編。
カギ括弧が抜けてたり逆向きになってるとこがあったり。
最後の展開は思わずぶわっときた。潤む。

“彼はうなずきました。
「じぶんは喜んで、じかもあいてにはだまって、いっそう大きなぎせいをはらいながら、ぎせいを感謝の心で受けいれるのは、よういなことではないよ。」おばあさんはいいつづけました。「それは、だれにも見られず、ほめられもしないおこないです。でも、それは、いつかあいてを幸福にするものです。それがただ一つの報いです。」おばあさんは立ちあがりました。「おまえの思うようになさい!どちらでも。よく考えなさい!わたしはひとりで行くから。」
エーミールはとびあがりました。「ぼくも行きます、おばあさん!じぶんのなすべきことがわかりました。ぼくはだまっています!死んでも。」
おばあさんは、エーミールの目をのぞきこみました。「えらいよ!」と、彼女はいいました。
「えらいよ!きょう、おまえはおとなになった!ほかの人より早くおとなになった者は、ほかの人より長くおとなでいられるのだよ——じゃ、手をかして、みぞをとびこさせておくれ!」”[P.229]

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年6月3日
読了日 : 2012年6月3日
本棚登録日 : 2012年6月3日

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