刻々と変化する状況に対応する学者たちの疾走感あるエキサイティングな活躍がスリリングでよい。事実は小説より奇なりを字でいく、ノンフィクションのよさと当事者の語りの面白さが結実した作品。
コロナとの戦い以上に面白いのが、官邸や霞ヶ関との綱引き、そして国民とのコミュニケーション。
弁護士も含め専門家はとにかく正しいこと、データとそこから導き出される仮説を提示すればよいと思いがちである。しかし新型コロナの感染拡大を少しでも食い止めるためには政治やマスコミを動かさなければならない。そのような真理と現実の間で葛藤し、コミュニケーションの大切さを振り返る著者の姿勢が誠実で、実務家としての矜持を感じさせる。尾身先生への評価にも学者としてではなく実務家としての経緯が感じられる。
コロナと戦うために政治と戦わざるを得なかったこの専門家たちをディスっていた人たち、特に御用学者扱いしていた人たちは、本書を読んでよく反省するべきだろう。科学や医学のことがわからなくても、専門家として信頼すべきか否かを勘や経験知で判断できないのであれば、人間力が足りなすぎる。
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- 感想投稿日 : 2020年12月27日
- 読了日 : 2020年12月27日
- 本棚登録日 : 2020年12月27日
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