沖縄から貧困がなくならない本当の理由 (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2020年6月16日発売)
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私も沖縄出身で大学進学を期に首都圏に行った人間として、「いつかはまた沖縄で暮らしたい」という気持ちと同時に、実は「もう沖縄には帰りたくない」という気持ちが複雑に入り混じっている。

この内面を非常に的確に言語化されており、霧が晴れる思いだった。そして著者が述べているように、これは単に沖縄の問題ではなく日本で生きるのであれば薄っすらと誰もが感じている違和感の正体なのではないかと思う。率直に言って悔しいほどに核心をついていると強い共感を覚えた。

私も子どもの頃から「目立たないように」と、勉強やスポーツを敢えて出来ない風にしないと、からかいの中でさえ「デキヤーフージー(出来る風にかっこつけてるヤツ)」とレッテルを貼られるのを、恐怖に感じていた。沖縄を出るまでは、いつでも頑張ることとそれに程よくブレーキをかけることを細心の注意を払って生きてきた様に思う。都会で生活していても嫉妬や妬みは社会生活の中で出会うことも多少はあるが、一瞬、それすらも極端な恐れを感じる事がある。

社会全体の問題提起という観点からこの本を見てみるのも興味深い。

私も、いつかは故郷に貢献したいという気持ちはあった。そして貧困についてもなんとか貢献する術がないか考えていた。例えば教育。教育のレベルが上がることが唯一で効果的な施策なのでは、と思っていたがそれだけではないことをこの本を読んで理解した。貧しい子どもがいることは家庭環境の問題でもあるし、それを生み出しているのは産業構造の問題でもある。筆者は文化の問題ではなく社会構造の問題と行っていたが、これはもはや文化の問題だし、日本人であり沖縄人の保守的な意識の問題でこれは変える必要があるのかも含めてとても難しい。

著者は最後に日本全体の問題にも論を広げたが、逆に沖縄固有の問題もある。島国としての大きさの違いは、時間軸や程度の違いだけではなく、質的な違いももたらすのではないか。書評をいくつか見てみたが、本当に沖縄の特殊な社会環境の問題が伝わっていないのではとも感じた。

この時代に生きていることで、SNSの広がりや基地問題などこれまでとは違った動きが出てきている。新しい貢献の形もあるかもしれない。すぐには答えは出ないが考え続けたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス・社会
感想投稿日 : 2020年8月18日
読了日 : 2020年8月18日
本棚登録日 : 2020年8月18日

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