デスマスク (岩波新書)

  • 岩波書店 (2011年11月18日発売)
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感想 : 17
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デスマスクという興味深いが、多分にイロモノ的な一ジャンルに限ってのややマニアックな評論——かと思いきや、「裏」西洋美術史とも言うべき、非常に刺激的な快著であった。

西洋美術と聞かされると、ミロのヴィーナス、モナ=リザ、ダヴィデ像、絢爛華麗な宗教画や、豪奢で権威的な王侯貴族の肖像画などがまず思い浮かぶ。それらのとりすました美しさこそが西洋美術だという私の貧しい固定観念は、本書によってみごとに転覆させられた。
為政者、富豪、革命家、天才、罪人、自殺者たちの生と死の軌跡を、くっきりと浮かび上がらせた石膏像。あの「お高くとまった」西洋美術に、かくもなまなましく、鮮烈な表現があったとは…これまで敬遠してきたジャンルに親近感が湧いた。
終章の「名もなきセーヌの娘」など、特に私好み。彼女のことは寡聞にして知らなかったのだが、俄然興味をかきたてられた。

2012/6/7読了

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 芸術・芸能・教養
感想投稿日 : 2011年12月27日
読了日 : 2012年6月7日
本棚登録日 : 2011年12月27日

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