すみません、ここまで読んできて何ですが、いわゆる「クローズド・サークルもの」は大きく2つの種類に分かれるのだと気づきました。
1つは、明日は我が身の37564もの。もう1つは、単に閉鎖空間で(連続)殺人が起こる、というだけのもの。ここらへんはシチュエーションというより味つけ準拠で、「えっなんでこの状況であんたたちそんなノンキなの?」みたいなものもあるのだが、とにもかくにも。
そして本書は――「いわゆるクローズド・サークルもの」の中にはこういうのが少なくないのだが――状況は前者だが実際の雰囲気は後者、という作品である。
視点人物に同行者(しかもみずから好きこのんで追いかけ回している相手)がいる時点で、この2人の間で「明日は我が身…?」「誰も信用できない!」といった疑心暗鬼が稀薄なのはしかたがないが、それ以外の招待客たちも不自然なほどにノンキ…と言って悪ければ、礼儀正しい。
もっとモメようよ、もっとギスギスしようよ!!! …と、性悪読者としてはもどかしいが、得体の知れない脱出不可能な建物に死体および殺人鬼かもしれない人間と閉じ込められているわりには、みんな拍子抜けするほどに人としての形を保ち続ける。
パニクるでも、大糾弾大会を開くでも、推理合戦をするでもなく、書かれるものはと言えばあまりに陳腐な「天才」たちのやりとり。真相が明かされるや180度キャラ変わりする、怪人20面相が変装剥ぐシーンですかみたいな大時代なノリ。いろいろとツラい。
ミステリとして破綻はしていないので(ありきたりだけど)最低限のラインはクリアしているが、「クローズド・サークルが好きだから」と、わざわざ手に取る必要はないと思う。
2015/7/19~7/22読了
- 感想投稿日 : 2015年7月22日
- 読了日 : 2015年7月22日
- 本棚登録日 : 2015年7月22日
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