チャヴ 弱者を敵視する社会

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lemonandlimeさん 社会   読み終わった 

昨今日本でも大流行の「自己責任」や「移民有害」論に対する指弾の書。最富裕層が中流階級以下から搾取するためにこれらのレトリックを捏造したという、各種論拠を用いての指摘は正当なのだろうが、とにかく読後感が悪い。暗く、絶望に満ちた気持ちになる。
ひとつには、このディストピアに対する処方箋がないことだ。「頭を使わない単純肉体労働だが、長年勤めるうちに『熟練工』になれ、高給で安定した仕事」などというものを、肉体どころか頭脳労働の相当程度すら「ロボット(AI)に奪われる…!?」とおののいているこれからの時代に、はたしてつくり出せるものだろうか? そしてまた、「報われない」白人労働者階級が移民ヘイトやレイシズムに走るのを戒め、「英国は英国人にのみ報いればよい」というのではないと言うなら、そういう仕事を60億人分用意できなければならないわけだが、そんなことがいったい可能なのだろうか?
片や、ただでさえ億万長者な最富裕層は、なぜこのうえさらなる金子を貯め込みたがるのだろう。子や孫のため? …そんな「貧乏たらしい」心配は、中流階級以下のものだろう。100回生まれ変わっても遣いきれない財産を有しているエリートのエリートっぷりは、そんななまやさしいものではあるまい。
贅沢したいがため? …庶民の私ですら、四十の坂を越えて各種欲望(それはとりもなおさず「気力」の一種だ)の衰えを感じている。ダウンタウン松本が長者番付のトップを独占していた当時のエッセイで語っていたが、住宅などというものは、機能的にはどれもさして変わらない。ゆえに「オレに言わせれば、月に100万円払っても住みたい部屋などというものはこの世に存在しない」。これを「しょせん貧乏育ち」と嗤うことは、まだできるかもしれない。しかしこれが月額1,000万、さらに1億ではどうだろうか。人間の欲望には際限がないのかもしれないが、その身体性には、物理的限界というものが厳然と存在するのだ。
彼らが足るを知り、ノーブレス・オブリージュに目覚めてくれればすべては解決するとも思えるのだが…しょせん人間に、それを期待するのが間違っているのだろうか。人類はこのまま、餓鬼のごとき欲望と、罪なき他人への愚かでいわれなき嫉妬の果てに、なすすべなく滅び去るよりないのだろうか…?

2017/11/11~11/13読了

レビュー投稿日
2017年11月13日
読了日
2017年11月13日
本棚登録日
2017年11月13日
6
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