- 翻訳夜話 (文春新書 129)
- 村上春樹
- 文藝春秋 / 2000年10月20日発売
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岸本佐知子さんの発言で、訳文の日本語を磨くための努力についての質問のなかで、
「たとえば、翻訳をやっていて何となくいつもイメージするのは、水瓶みたいなものがあって、その中に水が入ってて、それを外から棒切れでコーンと叩くと中で響くという、それが翻訳だというイメージがあって(笑)」
という表現があり、とても印象的だった。ここでいう水は自分の持つことばや経験からくる感性をひっくるめたものに思う。この水を張っておく重要さに触れてらして強く頷いた。
正直翻訳のなかでも文芸出版翻訳で、学者と有名な作家のお二人による翻訳論が散りばめられているので、実際的に参考になるとは言いがたい。
けれどもハイライトである、「海彦山彦」の交換訳が原文付きで読めるセクションがとても面白かった。
個人的には柴田先生の力技でなく本当にきめ細やかな配慮のうえに成り立つ実直な訳文、プラス思い入れによるキャラクター描写のアクティブさが際立っており、それに改めて感動した。
今後の外文の読み方が変わりそうだなと思う。
2012年10月1日
- 世代論のワナ (新潮新書 451)
- 山本直人
- 新潮社 / 2012年1月1日発売
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世代の語られ方に興味があった時に出会い購入。50代半ばの今時の若者は…という安易な括り方にフラストレーションを感じ、バブル経験の無い私たちがどんな風に捉えられているのか知りたいと思っていたので面白く読めた。偏らない着目点や、ライブドアの踏み絵などわかりにくい40代と30代の間にある差などは勉強になった。
しかし後半は少し先を急ぎすぎてて、引いた目線とよった目線でじっくり見て世代間の冷戦状態をとかして行きましょう、というもやっとした結論が残念な感じがした。
2012年3月18日
渡辺氏ファンであれば、彼の生い立ちや小説家になるまでの経緯がわかり、有意義さは得られるはず。
戦中・戦後の日本の様子や世代間闘争に対する渡辺氏の感じ方、心臓移植に関してなどはドキュメンタリー的に読めるところもある。
しかし、帯やメディアへの告知によりもっと戦中・戦後の日本が知りたいと思って手に取ったので、本の内容に物足りなさを感じるというより告知と内容のズレを感じた。
2012年3月7日
- ミヒャエル・エンデ: 物語の始まり (朝日選書 540)
- ペーター・ボカリウス
- 朝日新聞出版 / 1995年11月1日発売
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欲を言えばドイツ語版そのままの訳が読みたい。
実際のエンデの幼馴染が1人の少年ミヒャエルの幼少からを物語る伝記。読み物として面白く、するすると読み終わった。
これを読むと、『鏡の中の鏡』などをまた違った読み方で読めるようになると思う。
2012年3月7日
- 疾走 上 (角川文庫)
- 重松清
- 角川書店 / 2005年5月25日発売
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機会があって、初めて重松清の本を読んだ。前から最初だけめくってはやめ、を繰り返していた作家。
この本は中上健次?と思うところもあり、でもどこか劇画タッチで当事者感が無く(これは当たり前か)、視点が泳いで入り込めないまま読んだ。
これは完璧に主観だけど、隣に誰かがいて、ツッコミいれられながら話が進行していく様な感じがある。一個一個感じることよりも先に、起こると決められてる事件が立て続けにやってきて、「あーあ、まただな。」というような。作家自体が傍観者的なのか、構造のせいなのか。でも矛盾するようだけど面白くて最後まで一気に読めた。
大人になるに連れて何度も死んでは甦るような経験を繰り返し、穢れを身につけていくけど、この本ほど凝縮したものを身に受ける人ってなかなか居ない。けど、ここまで穢れても受け止めて、誰かがそばにいてつながることで、魂が生きるんだなというお話。絶対に無理!という事も高い所からみると乗り越えていける。
あと不誠実さとか理不尽さを受けて、それでも誠実にいると酷い目にあう村社会の悪い構造も描いてたのかな。
他の作品のオススメを頂いたので、読んでみようと思う。
2011年10月2日
- 宇宙飛行士オモン・ラー (群像社ライブラリー 25)
- ヴィクトル・ペレーヴィン
- 群像社 / 2010年6月1日発売
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Ishiwataさんに教わった本。
衝撃的に面白かった。
ソ連などに限らず体制に痛烈にシニカルで、しかも青春物語的でもあるところがまたシニカルで。独白のところも強烈で。
読み終わって、ピンチョンとゼーバルトを読んだときの面白さを少々思い出した。
他の作品も読む。
2011年8月7日
- 週末 (Shinchosha CREST BOOKS)
- ベルンハルト・シュリンク
- 新潮社 / 2011年6月1日発売
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女性の描き方と、全体的なテーマと、終わり方が雑に感じて、どうにも入り込めず。
2011年8月7日
- 街場のメディア論 (光文社新書)
- 内田樹
- 光文社 / 2010年8月17日発売
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基本的にメディア論だけど、商取引、著作権、時に医療や書棚、おならのコミュニケーションなどに触れながら、たった一つを説明してる。
その一点はとても大事で、多分メディア論に期待されてない事だけど、それを一冊で説明している。しっかり伝わってきてわかりやすいし、内田氏の思考がとても好き。
2011年6月27日
- ドアーズ / まぼろしの世界 [DVD]
- トム・ディチロ
- キングレコード / 2011年1月25日発売
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比喩的なフィクションも混ざっている線の上に、編集されたドキュメンタリーを乗せている感じ。トータルでジムの人柄やバンドメンバーの存在を伝えようとしている。いい映画と思う。あと父親と妹のインタビューも良かった。
2011年5月8日
- ココ・アヴァン・シャネル特別版 [DVD]
- アンヌ・フォンテーヌ
- ワーナー・ホーム・ビデオ / -
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翼を持たずに生れてきたのなら 翼を生やすためにどんな障害も乗り越えなさい - ココ・シャネル
この映画は、観る人にまかされている部分が多くて、行間で語っている。女性ならではの気持の動きや、気の張り方やプライドの持ち方、その当時の社交界や男性のプライドの持ち方をわからない人が観ると、ストーリーを追えないのではないかと思う。前提とされるものが詳しく解説されていないから。
私が知っているかというとそうでもなく、ただ以前この映画の原作とは違う本だけど『ココ・シャネル -悲劇の愛』ソフィ・トゥルバック、松本百合子訳、集英社、1998 を読んでいて、シャネルという人が好きになって大変感銘を受けたので、とても良い映画だった。共感する。
『ココ・シャネル』の方が良いと聞いた事があるからそちらも観なくては。『ココ・アヴァン・シャネル』がフランスでヒットしたなら、シャネルのことが予想以上に共通の予備知識になっているのだろうと思う。
2011年5月2日
- キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書 887)
- 佐々木俊尚
- 筑摩書房 / 2011年2月9日発売
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上司に読んで欲しい本。「コンピューターとかインターネットとかわかんないから、紙でいいんだよ、紙で。」という上司に、ネットか紙かでくくってる時点で既に掴んでないって説明するのにいい本と思う。
読み終えた私の目線では、「じゃあ購買層を今後どうやって作って行こう?」と高い壁を再認識する本。
2011年5月10日
doggyさんのおすすめで観て、運命的な出会いだったと思った、好きな映画。たまたま調べていた一次大戦から二次に入る間頃のイタリア飛行艇についての理解も少し深まった。
個人の価値観と行動がストレートに結びつき、体制に流されずにいるポルコと、それを支える人達の関係に愛着が湧く。
加藤登紀子さんの歌もとても良い。
2011年5月2日
- フローズン・タイム [DVD]
- ショーン・エリス
- CKエンタテインメント / -
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写真みたいな映画。監督の視野と思考を忠実に再現しているような場面がたくさん。
どんなひとも心の中の時間の早さをそれぞれ持っていて、たとえば一人で時間を瞬間的に止めているひともいると思う。そういう個人的な時間を、共有できるひとがほんの少し存在してる。というような…
電話のあとベンがベッドに落ちて行くシーンや、不眠の呪縛が解けるところ、誤解されたまま諦めるよりほかなかったところや、誤解が解けるところ、子供の頃裸体を綺麗だと感じた時、など好きな瞬間がいっぱいあった。なにより射し込む窓明かりに埃が渦巻いているのを眺めるところには、多分その時感じていた気持ちとか匂いとかが全部閉じ込められていて、それを幼馴染に話してるところが好きだった。幼馴染は、埃?何⁉と思うだけだけど、本人にとってはその時の感覚が全部戻ってくるんだから面白い。
一瞬の個人的な時間に愛着を持つ監督なんだろうなと想像して好きな映画だった。
2011年5月2日
- 失敗学のすすめ (講談社文庫)
- 畑村洋太郎
- 講談社 / 2005年4月15日発売
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名著です。
2011年5月2日
- 潜水服は蝶の夢を見る [DVD]
- ジュリアン・シュナーベル
- 角川映画 / -
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潜水服は、精神は機能しているのに身体が麻痺し、身体に閉じ込められているロックトインシンドロームのジャン・ドー。蝶は自由に飛び回る想像力と希望の世界。
閉所嫌いで途中で窮屈になって目を逸らすこともあるくらい、引きの映像がなかなか現れない。再現力や色彩が素晴らしい。脳の中の声、もどんな声かわからないところからうまく作り上げたと思う。素晴らしいチームワークを感じた。
湿っぽい感動大作にせず、ジャズのようにジャンの闘いを描いていて、だから余計に感動した。
実話に基づくということで、本当にジャンに心からブラボーと言いたい。
2011年5月2日
「ほのあかり」や「陰翳」の美しさを日本人ならではの感性で書いている。石油ショックで犠牲になった照明の話など。
東京タワー、レインボーブリッジ、東京駅などの様々なプロジェクトで照明デザインを行ってきた石井幹子氏の本。
2011年5月1日
- テルミン ディレクターズ・エディション [DVD]
- スティーブン・M・マーティン
- PI,ASM / -
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天才的能力と知力のテルミン博士をとりまく人々が、彼の失踪事件を語るドキュメンタリー。並外れた能力を持つのも大変な時代の物語、面白い。
2011年5月1日
- 不思議惑星キン・ザ・ザ [DVD]
- ゲオルギー・ダネリヤ
- キングレコード / -
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これは面白い。考えさせられる。
2011年5月1日
- その名にちなんで (特別編) [DVD]
- ミーラー・ナーイル
- 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン / -
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本の方が好き。アシマの一歩一歩進む慎重な性格があまり出ていない。すごいスピード。ただし、ガンジスに遺骨をまくシーン、タージマハルを4人で眺めるシーン、英語のアクセント、など実際の理解を映像が助けてくれた部分はあった。
ゴーゴリの彼女ってどっちの文化圏か明確で、映像だと本当にその差がよくわかる。アシマの帰国前にゴーゴリが部屋で本を見つけるシーン、離婚に関して「本当に自由になった気がする」と言ったのは、どっちの文化圏か、ではなくなにが自分らしいかを選ぶのが良いということをわかったんだろうな。
2011年5月1日
- その名にちなんで (新潮文庫)
- ジュンパ・ラヒリ
- 新潮社 / 2007年10月30日発売
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『停電の夜に』最後の『三度目で最後の大陸』が発展したような長編。
名前が鍵になり移民一世や二世の心境と家族の偶発的出来事を淡々と丁寧に綴る。気づけばアシマの視点、ゴーゴリの視点を柔軟に行き来しながら移入。日常的出来事なのに読後異文化間コミュニケーションを乗り越えたような充実感。捨てられない両親の文化と血筋を保ちながら、自分で作り上げて行く二世としての人生。長期的視点じゃないとわからないことがちゃんと描かれている。
2011年5月1日
- トゥルー・ストーリーズ
- ポール・オースター
- 新潮社 / 2004年2月26日発売
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旅みたい。
2011年5月1日
- ソニアのショッピングマニュアル
- ソニア・パーク
- マガジンハウス / 2004年10月21日発売
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多分いちばん身近に感じるスタイルを変わらずにつくるスタイリストさんで、学生の時からずっと好きだった。革の質感、麻のざらざらざっくりな素材感、コットンやシルクの清潔感、マニッシュなスタイルと女性らしさの両立、などに共感してた。この本に出てくる物もやはり価値観が現れていてよかった。arts&science代官山で買いました。
2011年5月1日
- エンジェル [DVD]
- フランソワ・オゾン
- ショウゲート / -
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イギリス40-60年代に活躍したエリザベス・テイラーという作家の同名タイトル小説に若干違う要素を入れてつくった50年代ハリウッド風の作品。主演ロモーラ・ガライ。
「まぼろし」ににた要素を感じる。ヒロインが、嫌いになれない味わい深いところをもってて、だけど虚構を信じすぎちゃう。
この映画の主人公は、自分が片田舎のグローサリーショップ二階に住む下層階級の生まれだと受け入れず、既に子供の頃に他界していた父方の貴族の血を引いてるとか、母がピアニストだとか嘘ばっかり。豪邸パラダイスハウスに憬れる夢見る少女。そんな彼女が流行作家としてのし上がって欲しいものをいっきに手に入れる。パラダイスハウスも。
だけどここからいっきに下降していき、現実と虚構が混ざって行く。壮大な夢と現実のギャップがギャツビー並みだった。
2011年5月1日