太宰治との出会いから心中までの一年余りの日記。
これを読むと、最初から太宰と共に死ぬつもりであったことがわかる。太宰が死ねば自分も死ぬと。しかし、年が明けて太宰の容態が悪化すると懸命に介護するなど、決して死に急いでいたわけではないようだ。あくまで、愛するに太宰に添い遂げると。
太宰も富栄をを信頼していたと見え、同じ頃、やはり太宰の愛人であり、「斜陽」のモデルであった太田静子の手紙の整理をさせたりしている。富栄も静子を「斜陽の人」と呼びながら相当意識していたはずであるが、嫉妬にかられて燃やしたりしてしまわなかったのは、冷静であったということだろう。
なお、「斜陽」6章冒頭の「戦闘、開始。」の一文はこの日記冒頭からの引用である。つまり太宰の「斜陽」は同時期の二人の愛人の日記を元に作られていたことになる。他人の日記や手紙をどんどんパクって作品に仕上げてしまう太宰にはホント感心してしまうわ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2013年6月1日
- 読了日 : 2013年5月29日
- 本棚登録日 : 2013年5月29日
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