さまざまなジャンルの日本マンガ100冊を紹介している本。
少年マンガをほとんど読まないため、100冊のうちで、私が読んだことがあるのは8作程度しかありませんでした。
著者の広範な読書量と知識量に驚きます。
どうしても、読んだことのある作品の項目を熱心に読んでしまいます。
『西洋骨董洋菓子店』は、採り上げられている伏線について、記憶が曖昧になっているため、もう一度読み返さなくてはと思いました。
『孤独のグルメ』は、各話のページ数がたった8Pしかないとは思いませんでした。
内容が濃いため、そんなに短いとは思ったことがなかったのです。
本書でも「読みごたえは、数十ページを連ねる短編をはるかにしのぐ」と評されていました。
外国でもベストセラーになったとのことで、日本ならではのB級グルメ話が海外でも人気を呼んだことが意外でした。
また、『日出処の天子』の評は見事にまとめられていました。
子供の頃に読んだきり、作品に含まれた意図をきちんと汲みとれず、消化不良のままでいた作品だけに、腑に落ちた感じです。
そもそも著者が、法隆寺で聖徳太子絵伝として「王子たちの昇天の図」を見て、一度にみんなが死んだことを不思議に思ったことが始まりだとのこと。
そのことから、太子の子供たちが皆殺しになったことを知り、この作品執筆につながったそうです。
名作が生まれた不思議な経緯を知りました。
『風と木の詩』は、男性には理解できない作品だと思っていましたが、寺山修二は毎週この作品が掲載される少女コミックの発売を心待ちにしていたそうです。
ジュネの『花のノートルダム』を読んだ時以来のときめきだと語っていたということから、ユニセックスな感性を持つ人なんだと思いました。
また、『ポーの一族』について、吸血鬼の孤独をボーイズラブと結びつけたことが意外で驚きました。
言われてみると、たしかに納得です。そういうわけだったとは。
作品の要となる肝心の結末を語りつくしてしまうこともなく、展開は曖昧なままに、上手にまとめているのも、マンガファンには嬉しい点でしょう。
これほどまでに作品が紹介されていると、どうしても作者によるバイアスがかかりそうですが、個人的な趣味に偏りすぎず、公平な目線で解説してくれている読みやすい新書となっています。
- 感想投稿日 : 2012年5月29日
- 読了日 : 2012年5月29日
- 本棚登録日 : 2012年5月29日
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