茶の本

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レビュー : 10
リカさん 芸術・文化   読み終わった 

先日、岡倉天心の活動拠点であった五浦六角堂を訪れたこともあり、彼の著書を読んでみました。
文章が高雅で典雅。多少難解ですが、ぐいぐいと引き込まれます。

海外からの視点で日本文化を見つめ、海外へと紹介する目的で書かれた本ながら、広く仏教や儒教の精神も踏まえた内容であるため、日本人である私にもかなり読みごたえがありました。
特に「茶道は道教の仮の姿」という発想には驚きました。
わかっているようで実はよく知らない道教。そこに茶道との共通性を見いだすとは、さすが様々な文化や宗教哲学に精通した著者ならではの着眼点です。

さらに、茶を生の術に関する宗教だとまで言い切る姿勢に、日本人にとっての茶の存在の大きさを感じさせられました。
道教には前々から興味を持っていましたが、呪術的な決めごと、秘めごとが多く、よく把握しきれずにいる状態。
それを天心は、「道教は美学の領域での処世術」と解説しています。
儒教徒や仏教徒とは異なり、この浮世の中にも美を見いだそうと努める姿勢が道教なのだとのこと。

さらにそれは「人生の些事の中にでも偉大を考えるという」禅の精神にもつながっていくとまとめられています。
荒唐無稽な論を展開しているとは思わないながら、それほど深い思想によって成り立つものだったのかと、あらためて日常生活の中での飲茶について襟を正して考えました。

日本美術の発展と保存のために尽くした彼ですが、自分のパトロンだった九鬼隆一男爵の妻と恋におちます。
九鬼の妻は身重の身体で隆一と別居し、天心の元へ走るというスキャンダルを起こしたため、彼は東京美術学校を追われ、五浦へと居を移します。

隆一の息子、九鬼周造は、幼い頃、天心を父と思っていたということ。
既読の九鬼周造の『いきの構造』を連想させる文章だと感じられたのは、そういった複雑に入り組んだ人間関係によるものかと、考えさせられました。

はしがきは彼の弟が書いているとのこと。兄との思い出を交えた淡々とした文章の中にも、時代の流れに翻弄された天心をさりげなく擁護するようないつくしみがかいま見られました。

レビュー投稿日
2012年9月27日
読了日
2012年9月27日
本棚登録日
2012年9月27日
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