超芸術トマソン (ちくま文庫)

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本棚登録 : 766
レビュー : 70
著者 :
リカさん 日本文学   読み終わった 

もともと、元デンマークサッカー代表のヨン・ダール・トマソン選手のファンで、トマソンの情報収集をしようとウキウキ検索したところ、「超芸術」とか「シュール」という予想外の言葉が一緒に上がってきました。
なんだろうと思って読んだのがこの本。

まったくサッカーのトマソン選手とは関係ありません。

ただ、もともとはゲーリー・トマソンという人の名前から付けられていました。
助っ人選手として巨人にきたものの、大した結果を出さなかったためファンから「トマ損」と呼ばれたそう。
さらに赤瀬川原平氏が、ムダな建築物を意味する「超芸術トマソン現象」という言葉を作り上げたとのことです。(本人がそれを知っているのかは気になるところです)

さて、そんな世の中に不要な建築物を見つけてはその無用さを愛でるというこの本。
おもしろい着眼点です。

かつては必要だったのに、いつしか時代の流れに取り残されて、すっかり無意味な存在となったものは、気を付けて周りを見回せば、けっこう見つけられるものだと、この本で教えられました。

赤瀬川原平氏が、本職の作家の仕事とは別にライフワークとして立ち上げたトマソン探索。それに賛同した多くの人々が、情報を寄せています。
氏はそうした市井の人々の情報に感謝したり、応援したり、時には「このところ読者からの報告が少ない。たるんでおる。君たちは人の報告を見るだけの人生を送るのか!そういうものはトマソンの空振りのバットにあたって骨折するぞ。」などといって鼓舞しています。

そうしたトマソン探索、そして読者との交流が、全編を通じてとても楽しそうに綴られています。
石を載せたトタンの屋根の写真を「世の中は全て漬物である」と表現するあたり、やはり作家。
無用の長物と作家のイマジネーションが重なり、この本を奥行きのあるものにしています。

この本を読み終えると、自分でも身近なトマソンを探したくて仕方がなくなります。
一番見つけやすいのは、行き先を失った「完璧な無用階段」でしょうか。
日常のひそかな楽しみが増えました。

レビュー投稿日
2018年6月25日
読了日
2018年6月25日
本棚登録日
2018年6月25日
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