人生を完全にダメにするための11のレッスン

  • 青土社 (2005年11月1日発売)
3.73
  • (4)
  • (1)
  • (5)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 35
感想 : 7

タイトルの通り、ダメ人生を送りたいと願う人向けのマニュアル本。
「人生失敗学入門」という宣伝に興味を引かれて、読んでみました。

真面目くさった口調で、(ん?)と思える事項がまとめられています。
楽しく笑ってハイおしまい、という、単純な内容かと思いましたが、そうではありませんでした。
そうでなければ、人を煙に巻くような厭世論かとも思いましたが、こちらでもありませんでした。

(なるほどね)と思わせながら、時にくすりとさせ、また時には現実をひやりと思い返すような、なかなかウィットに富んだ内容。
訳者が「フランスでは熱狂的な支持を集めたベストセラー本ながら、日本でこの本がベストセラーになることはないかもしれない」と、あとがきに書いていました。
その理由は「日本は、依然として単一的価値観に支配された社会だから」。
確かに、ブラックすぎて笑えない箇所も多々あり、私から見ても、日本で受ける内容ではないと思います。
ただ、ヨーロッパの知識人に愛される内容だということには納得です。

例えば、基本原理の一つに「法律を事細かに遵守すること」とあります。
その補足として「人からバカにされ、時には一杯食わされ、阿呆と思われることは確実である」と。
これを笑える風土は、日本にはなさそうに思えますが、フランスではツボにはまる人が多いことでしょう。

「オゾン層破壊に失敗する」の補足に「時すでに遅し。」と書かれてあり、(痛烈だ~)と思いました。

「ダイエットとは、死刑執行人と死刑囚を一人の人間が兼ねる唯一の拷問である。いわば、不幸のセルフサービスである」など、確かにいい得て妙と思える言葉がちりばめられています。

生きる上で全く無駄な一冊という売りこみですが、なかなかどうして、書かれてあることを実践するのは、難しいもの。
つまり、人生を完全にダメにすることはかくも難しいことなのか、と読者は気付き、楽しく絶望する(?)ことになるのです。

時間をかけて読み、文の裏に潜んだアフォリズムや警告を読みとることが、極上の読書時間をもたらすものとなりそう。
訳者も指摘しているように、とことんダメ人間を推奨しているようでありながら、この本のどこにも自殺を提唱していないという点は、まさに失敗だらけの人生そのものも楽しく生きていこうという人生礼讃の姿勢から来るものだと感じました。

ちまたに星の数ほどある成功本からは一線を画したものなので、逆の視点からのおもしろみがあります。
ただ、西欧のシニカルさとウィットに満ちた本なので、かなりクセがあることを覚悟の上で読まれることをお勧めします。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心理学・自己啓発
感想投稿日 : 2013年1月7日
読了日 : 2013年1月7日
本棚登録日 : 2013年1月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする