数時間で一気に読了。
70年代、インドから米国に移民してきた家族。そろりそろりと現地の生活に馴染みはじめてきたころ、両親の期待の星だった兄が不幸な事故に見舞われる…。
作家自身の体験が色濃く映し出された、自伝的小説。
移民として暮らすということは、家の中と外とまったく異なる文化のふたつの世界で暮らす、ということだ。子どもだって家を出れば七人の敵がいる。移民であれば、なおさらだ。
それなのに、主人公のアジェは家でももはや安らぎを得ることはできない。変わっていってしまう父と母、子どもの目を通して描き出されるその姿で、読むわたしたち(大人)は両親の重い苦労と燃えるような苦悩を感じる。
とはいえ、これは一人の少年の成長の物語でもある。家の中にも外にも居場所を見つけられないアジェはあるときから読書に没頭することで現実世界を離れることを覚え、やがて「書く」ことに自浄作用があると気づく。悲しさと寂しさはあっても、若いひとが少しずつ成長していくさまを読むのは、やはり心楽しく救われる。
作者は、この本を書くのに13年という歳月を費やしたそうである。それを、ものの数時間で読んでしまっていいのか、と思わないでもないけれど、作者は喜んでくれる気がする。
訳者あとがきは必読。あとがきも含めて、この本は一冊の作品となっている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2018年3月24日
- 読了日 : 2018年3月24日
- 本棚登録日 : 2018年3月24日
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