大臣夫妻の6歳になる息子のベビーシッターをしている Sophie は、20代後半になって、どうしてこんな仕事をしているのかと、大臣夫人が訝しげに思うほど、美しくて、慎ましやかで、気のきく女性だった。 しかし、 Sophie は、自分で知らないうちに、不可解な行動をしてしまう、という奇妙な症状に悩んでいた。 「私は、気が狂っているの?」と、過去の忌まわしい記憶に悩まされながらも、静かな毎日を送っていた Sophie だが、ある朝、又、自分の正気を疑いたくなる出来事が起こり、彼女は、平静を失い、全てを捨てて、逃避行へ出る・・・
「サスペンス物は、食傷気味」 と公言してはばからない私が、一気に読み尽くしてしまった、久々に巡り合った読み応えバッチリのスリラー。
人間の心の奥に潜む異常性と邪悪さを、作品の全面に押し出した、悪意と狂気が織り成す、なかなか凝った構成になっている作品です。
ストーリーと構成の妙を十分に楽しめる読み物なのですが、どうして楽しめたのかを書いてしまうと、読む時の楽しみが損なわれてしまうのは、良質なサスペンスの性。 ネタ割れレビューが嫌いな私には、騙されたと思って、最後まで読んでみて下さい、としか、言えないのが、とても辛い所です。
緊張感溢れ、かつ、なめらかな読み心地の文章、『異常』な作中人物の心理に、読者をすうっと感情導入させてしてしまう、手際の良さなどと並べ、人間の心の底に潜む悪性が、前面に押し出されているのにも関わらず、読後感がそれ程悪くないのも、本書の評価したいポイントです。
このレビューは以前ブログにアップした「Robe de marié」(http://bibliophilie.blog3.fc2.com/blog-entry-994.html)のものです。邦訳は未読。
- 感想投稿日 : 2011年12月1日
- 読了日 : 2011年2月11日
- 本棚登録日 : 2011年12月1日
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