少女七竈と七人の可愛そうな大人

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本棚登録 : 3274
レビュー : 665
著者 :
lonesinkerさん 日本の小説   読み終わった 

『私の男』がなかなか良かったので同じ作家を読んでみることに。同じ旭川を舞台に、あちらが重く湿った肉をそなえた人々の世界であるのに対して、こちらは、神話めいた美貌の少年少女を中心とする、おとぎ話のような物語だ。
時間がとまったような小さく静かな町の中で眠ったように生きていた少女たちは、ある日突然、次のページがめくられたように、あるいは何かが身体の中を通り抜けたように、変化する。どうしても手に入れたいひとりの男を自分の力で見つけだした女は、その日から女の辻斬りとなり、さまよいつづける旅人となる。その娘は、自身の分身と築き上げた美しく精巧な世界を永遠に捨てて、外の世界へと歩きだしていく。静かで小さい安定した町は家族たちの世界であり、その中では「いんらん」の印を刻まれた2人のおんなたちは異形のものとなってしまうのだが、しかし彼女たちに欲望を自覚させ、小さな世界を壊して生き始めさせるものが、それぞれの母親からの解放であったという事実は、これが永遠にすれちがっていく男女の物語であると同時に、母娘に伝わる呪い、そそして解放という贈り物の物語でもあるということを教えている。「七竈」「雪風」という不思議な名前と、古風にジェンダー化された話し言葉が、この物語世界に神話めいた風貌をあたえることに成功している。老犬までが「女というのは可愛いものだ」などと考えていたりするのが愉快で、全体に流れる淋しさ切なさと絶妙なバランスだ。

レビュー投稿日
2015年2月10日
読了日
2015年2月9日
本棚登録日
2015年2月9日
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