恋 (ハヤカワ文庫JA)

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本棚登録 : 316
レビュー : 48
著者 :
lonesinkerさん 日本の小説   読み終わった 

学生闘争に邁進する活動家との不毛な関係に疲れた布美子の前に現れた美しいカップル、信太郎と雛子。彼らを神のように崇める布美子の愛によって、2人はより完璧に近づくように見えた。ある男が現れて3人の関係を破壊するまでは・・・。あさま山荘事件の裏側で、ひとつの時代の終焉を示すように、殺人で終わったある個人的な物語。
作家がこの物語をなみなみならぬ思い入れをもって書いたことはよくわかる。だが、このカップルの異常な完璧さを形成していた核心の「秘密」には、ほんとうにこれだけの重さが与えられるべきだったのだろうか?それこそ、この禁忌を過度に神聖化することになりはしないか。また、殺人にいたる布美子の心理は実に説得的に描かれているとはいえ、人ひとりを死に至らしめた当時の未熟な他者依存を自己批判的にみつめなおす言葉が、晩年の布美子の口からついに語られることがないのも、私には気になった。ライターである語り手をおきながら、「あの時代」とともに生きるのをやめてしまった主人公を外側から見る視点がないのは、やはりこの作品の大きな欠点であるように思える。

レビュー投稿日
2013年1月4日
読了日
2012年12月27日
本棚登録日
2013年1月3日
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