私の男

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本棚登録 : 4618
レビュー : 984
著者 :
lonesinkerさん 日本の小説   読み終わった 

イヤな小説である。近親姦に殺人まで絡むのだから当たり前だ。だが、うなるほど上手い。
冒頭のシーンで鮮やかな花柄の傘をさして銀座を歩く2人は、印象的ではあっても、まだ作り物めいたキャラクターだ。それが、荒川の拘置所近くの安アパート、黒い海を望む紋別の町に舞台を移したとたんに、肉の重さや匂いをまとわりつかせて動きはじめる。
時間をさかのぼる叙述形式によって、あまりにありえなさそうな花と淳悟の関係に得心がいくようになるというわけでもない。ただ、その土地の濃厚な気配とともに、2人の肉の交わりが、実体のある重みとして感じられ始める。
氷原の上で、花にこんこんと語りかける「大塩さん」、荒川のアパートの2人にとりついている田岡、結婚式の会場で、いい気になるなよ、小娘・・・という気配をのこして動く中年のウェイターなど、脇役たちが放つ存在感も強烈だ。
主人公に「腐野」なんて名前をつけるあたりがどうも軽い印象だったのだが、先入観を裏切るどっしりした作家ぶりで、これから読む機会が増えそうだ。

レビュー投稿日
2013年2月13日
読了日
2013年2月11日
本棚登録日
2013年2月13日
2
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