靖国 YASUKUNI [DVD]

監督 : 李纓 
出演 : 刈谷直治  菅原龍憲  高金素梅 
  • CCRE
2.66
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本棚登録 : 99
感想 : 27
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本当にこんな映画で右翼が怒ったの?むしろ喜んじゃうんじゃないの?って思うくらい、突っ込みの足りないダメダメなドキュメンタリー。
靖国神社の矛盾は、ここで取り上げられている勝手な合祀問題にとどまらないし、靖国に参拝する人たちの間にも、さまざまな分裂、矛盾がある。にもかかわらず、監督の側の勉強がまったく足りてなくて、ただ眼の前の事象を、自分の興味の赴くままに追っかけているのは歴然としている。
それ以上に問題なのは、この監督が、事象の分析や掘り下げよりも、美意識を優先してしまっているということだ。刀鍛冶の老人に対するインタビューがまったく成功していないにもかかわらず、彼のシーンが映画の比重の半分を占めているのはなぜなのか。これだけ老人に密着しながら、なぜ監督は、「あなたが作った刀で多くの人の首が切られたのですよ」とズバリと切り込むこともできないのか。対象に肉薄する勇気もないまま、この老人に羽織袴を着せて「徒に汚すなかれ日本刀」と朗詠させるような、あざとい演出をする点に、監督自身の未熟さが隠しようもなく現れている。歴史映像資料のバックにオペラを流すような演出にしても、綺麗にまとめるなよと言いたい。
端的に言って、「靖国」という巨大な素材に迫るだけの知識も実力もない、ただ自分の素朴な驚きと美意識にひきずられた、映画学校の卒業制作レベルの駄作をめぐって、あれほどの騒動が起きたという事実に、この程度のものさえ冷静に受け止めることのできない日本の右翼と左翼のダメさを見せつけられる、なんとも情けない鏡のような作品である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年8月25日
読了日 : 2013年8月24日
本棚登録日 : 2013年8月25日

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