初夜 (新潮クレスト・ブックス)

3.64
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本棚登録 : 524
レビュー : 61
制作 : 村松 潔 
lookslikevomitさん  未設定  読み終わった 

僕は、イアン・マキューアンの作品を、完璧な作品である、と言ったことがある。
そして、本作の読了時においても、その感想は変わることはなかった。
本作は、主題・プロット・構成・描写・文体、小説を構築する要素のいずれをとっても何らの新規性や事件性があるわけではなく、どちらかと言えば古めかしい主題を古めかしい手法で、王道に忠実に描き切った作品と言える。
だけど、読み始めてすぐに、魅力的な小説が総じてそうであるように、「首根っこを掴まれて物語に放り込まれ、離れることができなくなった」かのような、暴力的とも言える小説の魔力に憑かれてしまった。
これは一体なんなのか。
帯にあるタイムズ紙の評では、「マキューアンの長編小説が交響曲であるとすれば、この作品は室内楽曲である。より親密で、繊細で、しかし緻密さと精巧さにかけては、交響曲と同等か、むしろそれ以上である」という賛辞の言葉が並べ立てられている。
交響曲には交響曲の完璧な演奏が、室内楽曲には室内楽曲の完璧な演奏が存在する。
マキューアンはその両方を実現し、我々に聴かせることのできる、稀有な演奏家である。
読み始めてすぐに、それらの言葉は決して言い過ぎではないことに、我々は気づく。
いや、ほんと巧すぎる。

レビュー投稿日
2013年1月5日
読了日
2013年1月5日
本棚登録日
2013年1月5日
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