イランとアメリカ 歴史から読む「愛と憎しみ」の構図 (朝日新書)

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  • 朝日新聞出版 (2013年3月13日発売)
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感想 : 7
4

 最近の情勢を扱った前半もいいけれど、第4章から先の、イランの歴史をたどるところが非常におもしろかった。
 イラン人の祖先は、紀元前七世紀に歴史に姿を現し、メディア王国に服属していた。のちに指導者キュロスのもとに立ち上がり、オリエント全域を支配するアケメネス朝ペルシア帝国を建設。紀元前539年、バビロン攻略。紀元前330年、アレキサンダー大王に屈するも、これをきっかけにヘレニズム文明が花開くことになる。再びパルチア、ササン朝ペルシア帝国を立ち上げたが、今度はイスラム教を奉じるアラブに侵略を許す。イスラム教を受け入れたペルシア人たちは言語を手放すことはなかった。ペルシア語はアラビア文字で記述されるが、アラビア語とは別系統……中国語と日本語のような関係だと著者は記している。ついでにいえば、「イラン」という国名は「アーリア人」から来ている……つまり、イラン人はアラブではなく、ヨーロッパ人と根っこは同一というのだ。『千夜一夜物語』は、武力を持つアラブ人(王)と文明を誇るペルシア人(物語をとく女性)の関係を反映しているのだそうだ。
 こうした輝かしい歴史から、イラン人は自分たちを「世界の中心」だと認識しており、もうひとつたびたびの侵略から非常に「被害者意識」が強く、外国に対して猜疑心をもっているのだと著者は説明する。
 近代にいたり、イギリス対ロシアのグレートゲームで、ロシアの防波堤としてイランは使われる。イギリスに搾取されるがままのイランは、第三国としてのアメリカに大いに期待するが、アメリカはイランを冷たくあしらう。モサデク政権下、イギリスの資本による石油資産を国有化したイランだったが、石油がほしいアメリカはモサデクをクーデターによって倒し、親米のシャーによる独裁をイランに押しつけた。アメリカはシャーを傀儡としてイランを支配した。
 腐敗しきったシャーを倒したのが、ホメイニ率いる革命勢力だった。革命勢力はアメリカ大使館を占拠、その非常事態下において憲法改正に成功、宗教指導者による国家統治を正当化する。人質事件により国際的に孤立したイランに、イラク軍が軍事侵攻。イラン・イラク戦争が開戦する。戦局は当初イラクに傾くも、イランが押し返す。しかし、アメリカの武器支援により、イラクも息を吹き返す。ようやくイラン・イラクが停戦したのち、イランというたがが外れ、軍事的な優位を得て調子に乗ったイラクがクエートに侵攻して湾岸戦争が勃発……。
 その後も、イランはアメリカに接近しては手ひどくしっぺがえしを食うという歴史を繰り返す。本書を読むと、イランのアメリカに対する態度も、むべなるかなという気になってしまう。中東情勢は「複雑」と言われるが、それをひっちゃかめっちゃかにしてきたのがアメリカだということも理解できた。
 読みやすくて、頭に入りやすい文章で、たいそうおもしろくイランの歴史、イランとアラブの関係、イランとアメリカの複雑な関係を理解できる。良書です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文
感想投稿日 : 2013年8月4日
読了日 : 2013年8月4日
本棚登録日 : 2013年8月4日

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