「希望格差」を超えて 新平等社会

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年9月15日発売)
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 まとめると。まずニューエコノミー万歳。格差拡大は自由の拡大によるものであって、不可避。格差問題は、市場の「外部不経済」なので、公害と同じように対策が必要。市場の優れた点を保ちながら、格差をミニマムにする(注:オレにはコレ、意味不明です)新しい基準が大事になってくる、つまりこれが、新しい「第三の平等概念」なのであーる。

 でさ。
 まず、格差問題が「外部不経済」というのがナンセンス。格差問題は「外部」ではなく、どう考えたって市場「内部」の問題でしょうに。意味がわかんね。このあたりの本文は、経済主体ってナニヨどころか、センセの頭の中で主語がどっかにいっちゃってるとしか思えない支離滅裂さ。今どき公害だって排出権取引などを通じて市場の「中」で解決しようとしている。せっかく「中」に入ってるモノをわざわざ「外」に出しちゃう、それが「社会学的思考のセンス」というわけ?
 ニューエコノミー大好きな山田先生だが、実際日本がどんだけ「ニューエコノミー」なのよといういっちゃん大事な前提は、検証なし。ドラッカーやらライシュが言ってるんだから正しいでしょっていうのは、学者の仕事? で、日本が「ニューエコノミー」とやらになってるという例が傑作。ペットマッサージ、美容師にメイド服を着せるサービスとかが、なんとニューエコノミーの例なんだそうで。「想像力や創造力に富んだ美的センスを身につけた生産性の高い人」の例がソレですか。はぁ。

 あいかわらず、なんか「オレも、オレもそう思ってたんだよ」的な結論はうまいと思うけれど、論証がぐだぐだ。さんざっぱら「パラサイト」叩きした過去を微妙に修正して「若者弱者論」へとじわじわと体重移動してるあたりも、なんつーか面の皮が厚い。まぁつまりは、いままでの評価を変える著作ではなかったという一言だけで済む話ではあるが。
 最初に結論ありきで、それに都合のいいデータをさがしてきて当てはめればOKなのが社会学。という『反社会学講座』の指摘がまんまあてはまる。この人がこんなに売れっ子で、ホントにいいのか? 社会学。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文
感想投稿日 : 2014年3月30日
読了日 : 2006年3月30日
本棚登録日 : 2013年5月19日

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