インドカレー伝

  • 河出書房新社 (2006年12月16日発売)
3.45
  • (4)
  • (8)
  • (6)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 84
感想 : 12
4

 16世紀初頭くらいから説き起こし、インド料理の成立と変遷、そして「カレー」が生まれるまでを物語る。レストランで現在食べられているインド料理(おもにムガール料理の影響が強い)が、どのようにペルシアや中央アジアの料理の影響を受けて成立したのかとか。また一方、イギリス人はどのようにインドのスパイスを取り入れたのかとか。なかなかたのしいディテールが味わえる。

「料理」というのは、いちばんホンネが出やすいところだと思うんだよね。だから、この本はおとなしく皿の上だけにはおさまらない。彼の地ではムスリムなのか、ヒンズーなのか、どんなカーストに属するかによって、どう食べるのかも違ってくる。そういうのんも「料理」という鏡が赤裸々に映し出す。たとえばイギリス人がインド人を支配していたとき、召使いのインド人は決して主人と一緒にものは食べなかった。それは「礼儀正しいから」というよりも、イギリス人はアウト・カースト(カースト制度のさらに外にあるという最下級のカースト)だからして、いっしょにものを食べるというのは不浄の行為にあたるからなのだった。そんなことも、書いてあるよ。

 インド料理というのは、むかしから今のようなインド料理だったわけじゃない。ペルシアや中央アジアからの影響はもちろんだし、ポルトガル人がやってこなければ、トウガラシもじゃがいももトマトもインド料理には入ってこなかったわけだし。その中で、かなりの時間・空間にわたってインドを支配下に置いたイギリス人が、いっちばんインド料理への影響を及ぼすこと少なかったというのが興味深い。そして、イギリス人によるインド理解が「カレー」という形をとったというのもまた、頑固なイギリス人らしいというべきか。カレーはたしかに、インドの豊穣なスパイス文化の99.9%をとりこぼしているのだと思う。でも、それくらい薄まったからこそ、カレーは世界に拡がったのかもなぁ……。

 この本を読んでいるあいだじゅう、どうにもインド料理が食べたくなって困った。考えてみればオレの場合、寿司を食わない週はあれども、カレーを食べない週はない。インド料理は奥深く、この本1冊ではわかったふりもできないと思うが、インド料理を食べる楽しみが確実に増す1冊ではある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人文
感想投稿日 : 2014年3月30日
読了日 : 2007年3月30日
本棚登録日 : 2013年5月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする