人間の身体的な側面(遺伝子、病気に対する抵抗、人口増加・減少の原因、薬物、認知バイアス等々)に焦点を合わせた『銃・病原菌・鉄』とも言うべき著作で、ものすごい説得力がある。『銃・病原菌・鉄』がまだまだ文明というものを脳内の機能が発揮されたものと過大解釈してんじゃねーのという印象を読み手にもたらすというか、世界史の見方を根本的なところから修正する必要あるんじゃという印象を持った。陸地がつながってるあいだにアフリカからユーラシアに出てきたサルの一部が、家畜と農耕とで人口を増やし、病気も増やしたけど免疫も得た。海がまたつながって遮断されたアフリカとアメリカ大陸では、家畜由来の病気とは無縁だった。ヨーロッパ人が南北アメリカ大陸にもたらした天然痘が原住民を根絶やしにしたので、らくらくとアメリカ大陸を征服できた。一方で、アフリカはマラリアと黄熱病によってヨーロッパ人を拒んでいたが、それゆえに現地をヨーロッパ化しようという考え方にならず、象牙と金と奴隷を奪いつづける収奪的な現地支配がすすめられた。19世紀以降、キニーネの生産が追いつくようになって一気に内地にまで征服が及ぶようになった。みたいな「なるほどー」というほかない一連の考察が得られて、めっちゃおもしろい。いや、断片的にはそういうこと知ってたけど、ひとつながりになる面白さがあるでしょー。人類史を俯瞰するストーリーテリングが巧みな、スリリングな1冊。
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- 感想投稿日 : 2024年11月2日
- 読了日 : 2024年11月2日
- 本棚登録日 : 2024年11月2日
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