希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

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レビュー : 86
著者 :
ルーさん トンデモ   読み終わった 

「日本社会は、将来に希望がもてる人と将来に絶望している人に分裂していくプロセスに入っているのではないか」
 これを著者は「希望格差社会」と名付け、その原因と将来を考察していきます。

 結論はうなずけるものがあります。でも、そこへ至る筋道が……どうにも納得できないものばかり。

 ひとつ例を挙げましょう。
 著者は、若者の絶望の原因のひとつとして、教育システムの崩壊を上げています。学校を出たからと行って、その学校の格に見合う就職が得られなくなった(パイプラインの漏れ)のが勉強のやる気を失わせているのだということです。さらに著者は「勉強を努力しても報われないというリスクに直面すると青少年は急にやる気を失う」のだと説明します。
 で、東京都生活文化局によるデータを提示するのですが、それが……
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 「今がんばって勉強すれば、将来役に立つと思うか?」
 という質問に対して、
 勉強が「できる」生徒は「そう思う」と答えた
 勉強ができない生徒は「思わない」と答えた
======================
 というデータです。

 勉強ができる生徒が「将来役に立つから」と思っているのは当たり前のことだと思いませんか? そう思っているから勉強するワケで。10年前と比べてさらにその傾向が強まった、というのなら著者の主張の補強になるでしょう。しかし、提出されているのは1回限りの調査データです。
 これでは、近年の傾向を説明するためのデータにはなりません。「努力が報われないとやる気が失われる」というデータでさえありません。「勉強が苦手なヤツは、勉強が大切だとは思ってない」というあたりまえの心理を説明しているだけです。こういうのを「すりかえ」というんでは?(まぁ、社会学の世界ではよくあることかもしれませんが……『反社会学講座』をひくまでもなく)

 この他にも「近年、こうなっている」と主張しているのに、昔と比較するデータがなかったり、「昔」が何年前かわからなかったりするものが見受けられます。また、データもないのに「決めつけている」例は枚挙のいとまがありません。

 また、たとえばあっさりと「児童虐待やドメスティック・バイオレンスも、一九九八年前後から急増している」と書いていたりするのも問題。「児童虐待防止法」の成立が平成12年、「DV防止法」の成立が平成13年です。要するに、統計上「見える」ようになっただけであって、それまでも存在はしていたのです。

 結局、著者は何を言いたいのでしょうか。現在の若者は、「努力しても空しい」状況下にあって「リスクフルな現実社会から逃走」している。甘やかされて育てられたあげく、パラサイトとなって社会の不良債権となり、依存症やひきこもりに逃避し、幼児誘拐などの自暴自棄型の犯罪を起こす、という結論です。刺激的で、キャッチーで、世の中年以上の層にひろくアピールできると思います。しかし、その結論へいたるための「論証」について、私はとうてい納得することができませんでした。

レビュー投稿日
2014年3月30日
読了日
2005年3月30日
本棚登録日
2013年5月19日
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