迷走する家族―戦後家族モデルの形成と解体

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著者 :
ルーさん 人文   読み終わった 

 晩婚化&少子化のみならず、離婚率の上昇、自殺者の増加、虐待やネグレクトなど子育ての質の低下……「家族の機能が低下している」ことの原因はなにか? それは従来の「家族モデル」が機能不全に陥っているから、というのが本書。

 晩婚化・少子化の原因として、よく若者が「サラリーマン&専業主婦型」のような従来モデルを重視しなくなったことが挙げられる。また、家族の機能不全について「家族に関するモラルが低下しているから」という説もある。しかし本書の主張は、「従来モデルを固守するあまり、それが自己目的化し、現実とくいちがってきている」というものである。

 つまり、「意識が変化している」のではなく、「現実が変化しているのに、意識が変わらない」から問題が起きているのだというスジである。かつて高度成長時代は、どんどん高収入化・高学歴化がすすんでいたから、若い男性と結婚しても現在の生活レベルを落とさず、将来においても豊かな生活をあてにできた。しかし低成長下の現在では、若い男性の給料では、専業主婦を維持しながら中流生活を営むのは不可能。親元にパラサイトしていたほうがよっぽど豊かな暮らしができるから、結婚しないのだと。
 かつては社会に適合していたひとつのモデルがあったが、現在ではその維持が限界に達し、解体の危機に瀕している。ところが、あらたにとってかわる「理想の家族」モデルは見あたらない。家族の「迷走」がはじまっている、と著者は警告する。

 さて、ここまではいいとして。どうにも納得ができないことがいくつかある。

 まず、著者は「意識が変わらない」というが、適齢期の未婚女性に「理想のライフコース」を聞いたアンケートでは、「専業主婦」と答える割合が1992→1997のあいだに33%→21%と大きく低下している(出生動向基本調査 2002)。このマイナス分がどこにいったかというと「両立」である。「理想」を聞いているわけだから「ホントは専業主婦がいいんだけど経済的事情でしかたなく」なんてものは関係ない。やはり「意識」も変わってきているんではないか? それにしても33%だしね。「専業主婦」はほんとうに「理想モデル」だったのかな? そこんとこの検証はないの?

 若年男性の相対的な収入低下が晩婚の原因というのも、まぁ長い目で見ればそういう面もあろうけれど。収入の低い男性に未婚率が高いのは昔からだし。でも、収入が高い男性の未婚率も昔から高いのだ。それどころか、女性でも、まんなかあたりの収入層が結婚しやすく、両端の未婚率が高いのは変わらない。こういう「変化のなさ」を見ると、「戦後家族モデル」がどれくらい現実の結婚行動を変えてきたのか、その引力について過大に見積もりすぎているのではという疑問をぬぐえない。

 そもそもこういったリクツ、どこまで新鮮かというと? 大筋としては、山田がパラサイト論のなかで繰り返し述べてきたことと変わらない。それと『希望格差社会』の「リスク化」「二極化」論をミックスして、「家族観」にあてはめただけ、なんじゃないかな。
 だから『希望格差社会』でオレが感じた違和感もそのまんま。雇用情勢の不安定化について、やたら「ニューエコノミー」を強調するのだが……デフレ不況にでワリをくった若者の就職難という、より単純なシナリオは採用されない。「ニューエコノミー」は検証なしで当然扱い。まぁ「パラサイト論」的には、若者を悪者にしておいたほうが都合いいもんね。
 経済論の記述に、とくに「うにゃっ?」となるところが多かった。「中小企業を守り、終身雇用・年功序列を守る代償として、被雇用者の収入の伸びは鈍化せざるをえない」みたいな、どこの「小泉構造改革万歳論者ですか」なものいいがあるのも気になる。つーよりこの文章、オレには前後がきちんと結べるとは思えない。いったいどんな関係が? 

 いろいろと違和感があるのはおいといても、そうじて二番煎じ的というか、出し殻ちっく。論拠となるデータについて「ほんとにソレでいいの?」みたいなあとづけ感があるのも『希望格差社会』ゆずり(けど、本書のほうが少しマシだとは思う)。オレ的には「読まなくてイイ本」。

レビュー投稿日
2014年3月30日
読了日
2006年3月30日
本棚登録日
2013年5月19日
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