零戦の設計主任を務めた堀越二郎の自らの手による開発記録史ともいうべき本書。長らく廃刊となっていたが、このほど復刊された。
零戦の開発前夜、海軍より提示された要求仕様は、当時の戦闘機の常識を大きく超えるものであった。特に、一般にトレードオフ関係にあるとされる航続距離と空戦性能の両方において、世界最高水準の達成が必達目標とされたのは重要である。これに対し、堀越二郎は「設計のしきたりや規格を、神格化して鵜のみにするようなことをやめて、その根拠を考え、新しい光を当ててみたらどうだろうか」という飛躍的な発想により、当時の設計基準の枠を超え、安全率の合理的な引き下げという解を導き出して見せた。
過去の経緯や規格に従った設計は簡単だけれども、大きな飛躍を達成することは難しい。自分も技術屋の端くれとして、設計手法の根拠を常に疑う姿勢を忘れてはならないと、痛切に感じた。
文句なしの名著である。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
自伝
- 感想投稿日 : 2013年2月12日
- 読了日 : 2013年2月12日
- 本棚登録日 : 2013年2月12日
みんなの感想をみる