ベイジン〈下〉 (幻冬舎文庫)

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本棚登録 : 1096
レビュー : 121
著者 :
lsh-5さん 経済小説   読み終わった 

2011/9/9読了。

環境とエネルギーを専攻し、その中で原発についても触れる環境に身をおいている私にとって、非常に勉強になる1冊であった。
原子力に追い風が吹いていた2000年代後半に、バブルとも呼べるほどに世界中を包み込んだ熱気に対して危惧を抱いていた冷静さと、どれ程の取材を行ったのか想像もできないほどの原発に対する正確な知識と認識には、恐れ入ったの一言。執筆時点、日本で原発が内包する真の危険性を認識していた人がどれだけいただろうか、そう考えるだけで著者の優れた先見性が理解できる。

もちろん、小説としての出来も素晴らしい。テーマを絞り込まず、あれもこれもと欲張ったものは大抵の場合陳腐に仕上がってしまうものである。しかしこの本は、中国,人種,原発と近年の大きなトピックが詰め込まれているにもかかわらず、全体のまとまりは全くといっていいほど損なわれていない。
また、登場人物それぞれがトピックに関連のあるバックグラウンドを持ち、彼ら彼女らのストーリーがリンクし集約していくことで生まれる、終盤の緊迫感とスピード感に手に汗握ること間違いなしである。

今作では全くと言っていいほどエピローグが描かれていないのだが、そこには、答えは与えられるものではなく自分で考えて出すもの、というメッセージが含まれているのだろう。また結末に限らず、本の至る所から溢れだす著者の強い想いを感じたのは、私だけではないはず。

レビュー投稿日
2011年9月9日
読了日
2011年9月9日
本棚登録日
2011年9月9日
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