トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして

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  • ダイヤモンド社 (1978年5月1日発売)
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感想 : 178
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トヨタの生産方式についてなんとなく理解していたつもりだったが、この本を読んだことで理解が格段に上がった。課題はずばり「多種少量生産でどうしたら原価が安くなる方法を開発できるか」である。そして豊田喜一郎が発送したジャストインタイムを大野耐一が実行した。これはフォード式の大量生産とは全く逆の発想で、物の流れを「前工程が後工程へ供給する」のではなく「後工程が前工程に引き取りに行く」とし、「前工程は引き取られた分だけつくる」という方法。これは「作りすぎの無駄」は最愛のムダとし、仕様が変わろうとも在庫のない平準化生産をめざそうというもの。そしてこれを実現するために、現場の工夫やアイデア発想が行われ、単なる自動化ではない独特の進化となったと推測している。「自働化」もそのひとつで、高速性能の機械が不良をつくらないよう機会に人間の知恵をつけよ(自動装置付きの機械)というもの。逆転の発想を本気で遂行し、会社の価値や文化となっていることに、それを提案実行した人と許容した経営層に脱帽である。いつかトヨタの実際の現場でどのようにジャストインタイムが実現されているのか見てみたい。最後の”低成長時代に生産性を上げるには”はこれからの示唆となるので忘備録を残しておく。自働化・省力化・ロボット化などオートメーション設備の導入で工数さえ減らせば原価低減ができると思っている人が多いが、結果を見るとむしろ原価は上がっていることが多い。自働化による「省力化」の考え方自体が問題なのである。そこでトヨタが取り組んだのは”少人化”であるが、これは「変化に対応できる現場づくり」のことである。機械だけでなく人にも適用できるもの、すなわち人が一人休んでも量はその分減るが生産性は変わらない、という工程の実現である。「少人化」というのは、一人でも二人でも何人でもやれる生産ラインや機械←元々は定員制の考え方を否定するところからスタートしている。これは売れなくなってきて数量が減っても逆に生産性をあげようという試みである。トヨタ生産方式は経営革新に通じ、従業員の意識変革に繋がるのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月6日
読了日 : 2017年6月6日
本棚登録日 : 2017年6月6日

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コメント 1件

ことぶきジローさんのコメント
2017/06/06

奇遇です。自分も本日読み終えたところです。

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