私という運命について (角川文庫 し 32-4)

著者 :
  • 角川グループパブリッシング (2008年9月25日発売)
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感想 : 386
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読み終えて、胸がつまるというか、ぼんやりと考え込んでしまうというか。
お話自体はきちんとすっきり終わるのだけど、内容を自分と重ね合わせてしまう感じがある。
29歳から40歳までの、女の10年の物語。
自分自身がその只中にいる年齢だからこそ、そんな風になったのかも。

大手メーカーの営業部に総合職として勤務する冬木亜紀。
バブル期を抜けて、男女雇用機会均等法が成立して少し後の時代、亜紀は元彼である康の披露宴の招待状の返事を出しあぐねていた。彼からはプロポーズされたが断った過去がある。
別れから2年の歳月を経て、亜紀は康の母・佐智子から届いたまま封を切っていなかった手紙を初めて読み、自分の運命というものを見つめはじめる。

29歳からの10年、多くの女性はたくさんの選択を迫られたり、自分の往く道について思い悩んだりする。
結婚はするのか。出産はするのか(できるのか)。
結婚するとしたら、仕事は続けるのか。相手の家族と同居するのか。
出産後は主婦になるのか、仕事復帰するのか。
結婚しない人生を選んだとしたら、その後の生き方はどうするのか。
理想通り、思った通りにはほとんどならない人生の中で、どのような選択をして、進んで行くのか。

この小説の主人公・亜紀もそんな普通の女性の一人で、恋人と別れたり、また別の人と出逢ったり、仕事の面でも転勤になったりまた本社に戻ったり、家族の病気や身内の死、友人との関係の変化などが10年の間にさまざま起こる。
比較的厚めの一冊にぎゅっと凝縮された10年だからものすごく波乱万丈に思えるけれど、実際は比較的落ち着いた時期や事件めいたことは起きない穏やかなときもあるだろうし、恋愛だってまったくしない時期もある。そういう余白を思えば、こういうこともあるだろう、という10年だと思う。

10代や20代のときは、私自身、人生というものは自分で選択して切り開いていくものだと思っていたけれど、今になってみると少し違って、与えられた運命や自分の力では変えられない運命を受け入れて進んでいくことも、選択のひとつなのだと思う。
当然自分で自分の思う道を選ぶことも必要なのだけど、それと同じくらい、受け入れることも実際は多いのだということ。
諦めのように見えるけれど、それ自体自分の選択のひとつ。

人はよく選ばなかった道に思いを馳せたりするけれど、実際手に出来るのは、選んできたその道だけ。
<選べなかった未来、選ばなかった未来はどこにもないのです>
佐智子の手紙の一節が、すとんと腑に落ちた。
別れた人とまた出会うという運命の流れも時にはあって、それを自ら掴みに行くかどうかは自分の選択にかかっていたりする。

色んな人の色んな人生が絡み合って、ひとつの舟に乗って進んでいく。
時に自分がその舟を降りて別の舟に乗り換えたり、どうしようもない運命に引っぱられて誰かがその舟を降りることもある。
自分が往く先はどこなのか。選択の只中にいる私は、考えずにはいられなかった。

余談としては、白石一文さんの小説ってもっと理屈っぽいイメージがあったのだけど、この小説はとても読みやすかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2016年11月16日
読了日 : 2016年11月16日
本棚登録日 : 2016年11月16日

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