月魚 (角川文庫)

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レビュー : 888
著者 :
夜さん その他の小説   読み終わった 

古書店、無窮堂の若き三代目である真志喜は、美しく中性的な容姿で、どこか浮世離れしていて人を寄せつけない雰囲気を持つ。そして同じく古書店を継いだ瀬名垣は、人好きする性格だ。
対照的ながら幼馴染である二人は、幼い頃に起こったとある事件から、深く入り込めないのに離れられないという因果を引きずったまま、25歳になった。
本を愛する二人の、古書店としての日々。そしてお互いへの想い。

これは三浦しをんさんが真面目に取り組んだ淡いボーイズラブ、ということになるのだろうか。直截的な表現はないものの、きっとそうなのだろう、と匂わせる部分はそこかしこにあって、そういうものに嫌悪感を持つ人はもしかしたら駄目かもしれない。
でも何か低温というか、透明感が漂っているというか。
まさにタイトルの感じ。魚が泳ぐ夜の水面に、月がゆらゆらと写っているような、そういう雰囲気の小説だと思った。

そして、古書店の仕事を垣間見ることが出来たのはとても興味深かった。古めかしい昔ながらの古書店って私の地元にも何軒かあるけれど、たくさん人が入っている様子はないし、こういうお店の人はどうやって稼いでいるのかという疑問が解けた。
貴重な古書を見極める目を持つには勉強も必要だけど、持って生まれた才もかなり左右するということ。
本を間に挟んだ人と人とのつながりであったり、本を愛する人の想いであったり。そういうものを見極めるのは、勉強よりも持ち前の才なのだと思う。

そしてこの物語の核になっているのは、人は罪の意識を背負ったままで誰かをまっすぐに愛することが出来るのか、ということなのではないかと私は解釈した。
この物語の二人もお互い惹かれ合ってはいるのに、昔の事件からくるお互いへの罪悪感に縛られていて、だからこそ惹かれ合うのかもしれないし、そうではないのかもしれないし…という複雑なところに身を置いている。
その危うさがこの物語に透明感を与えているのかもしれない。

二本目に二人の高校時代をとある国語教師の目線で描いた短編と、最後に書き下ろしの超短編という、充実した内容。
真志喜の人を寄せつけないのに人を惹きつける感じが良かった。遠くから見つめていたい、という気持ちがとてもよく解る。

レビュー投稿日
2015年10月1日
読了日
2015年10月1日
本棚登録日
2015年10月1日
4
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