りかさん (新潮文庫)

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レビュー : 487
著者 :
夜さん ファンタジー   読み終わった 

小さい頃、大事にしていた人形やぬいぐるみと、会話していたことがあった。
もちろんそれは現実ではなくて自分の妄想の中での会話だったのだけど、会話できたらいいのに、という願望も含まれていた気がする。

そういうことが本当に起こる、言うなれば“和風ファンタジー”。ものすごく不思議な世界観。
よくよく考えてみればけっこう怖いのだけど(笑)、子どもだからこその澄んだ感性が羨ましくもなる一作。

リカちゃん人形が欲しいとせがんだ小学生のようこにおばあちゃんから送られてきたのは、黒髪の市松人形だった。名前は“りか”。
こんなはずじゃ、と落ち込むようこだったが、一晩が明けた頃その市松人形が会話をして人と心を通わせることが出来ることに気づく。人形は言った、「りかさんと呼んでね」。
りかさんに導かれたようこは、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れていく。

黒髪の市松人形が喋るってやっぱり怖い(笑)でもこのりかさんは、とても思慮深く頭が良く、少ない言葉でようこを助けていく。
元々はようこのおばあさんが持ち主で、ずっとおばあさんと暮らしていた。なのでようこは要所要所でおばあさんにも助けを求めるのだけど、りかさんとおばあさんの導きでようこはだんだんと成長していく。

世の中にある人形の中には、とても深い思いが込められているものがある。何か意味があって作られたものもある。
そういう人形が廻りめぐって持ち主が変わり、その思いや意味が忘れ去られた後でも、人形たちの中に残されたものは変わらない。
そこで苦しむ人形たちに手を差しのべて思いを解放させる役割を、ようことりかさんが担う。
強く信じる心と純粋な精神がなければ出来ない役割。シャーマンとか、そういうものに近いような(この作品にはそういう宗教的なイメージはないけれど)。

いわゆる青い目の人形がモデルになってるのかな、という人形も出てくるのだけど、この人形と関わった1人の少女の物語はとても切ない。
青い目の人形のことは、私も高校時代に牧師さんからじっくり聞いたことがあるのだけど、国と国の関わりや争いの中に人形が存在していることもある。
人形供養というものが実際行われているのだから、人のかたちを模したものに思いが宿るのは、よくよく考えてみればとても自然なことなのかもしれない。

もう1つ収録された「ミケルの庭」も「りかさん」と繋がっている。
詳しくは描かれていないけれど、とても深い繋がりが。

ファンタジックで可愛らしくてちょっぴり怖くて、実はとても重い意味がある物語。
普段何気なく目にしている人形にも、何かの意味や思いが込められているのかも。

レビュー投稿日
2016年12月29日
読了日
2016年12月29日
本棚登録日
2016年12月29日
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