その日のまえに (文春文庫)

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著者 :
夜さん 短編集   読み終わった 

何年か前にこの映画を観て、「やられた」という気分になった。
そして小説を読んでみたら、表題作で映画化もされた「その日のまえに」の後に、「その日」と「その日のあとで」という短編が収録されていて、さらに切なくなり、深みが増した。

その他にも4つの短編が収録されているのだけど、すべて“人の生死”が関わっている。
それも全部が病気。
小学生のときに病気で亡くなった同級生の回想、余命告知をされた男、若くして夫をなくした女、など。
そしてそれらが少しずつ繋がっていて、連作のようにもなっている。

余命告知をされた人の気持ちは理解できるはずもないから軽々しくは書けないけれど、大事な人を亡くした経験はあるからそちら側の気持ちは解る。
そういう人は、友人、知人、日々出会う人のなかにもたくさんいて、みんなそれぞれ深い悲しみを抱いていたり、後悔の念を持っていたりする。
突然であれ猶予があった状態であれ、大事な人を送り出したあと、何ひとつ後悔が残らない人間はいないと思う。少なからず「あの時ああすればよかった」とか「これを言っておけばよかった」とか思うことはあるし、もっと重くなれば自分のせいでその人が死んでしまったと自分を責める人もいると思う。
正解がないから、悩むし苦しむ。
それでも人間は強かだから、時間とともに少しずつ忘れて立ち直ったり、後悔を違うかたちに変える力も持っている。それはけして悪いことではなくて、生きていくために必要な機能なのだと思う。

送る側、送り出される側の苦悩や葛藤、悲しみ、痛み、そして強さ。
それらが詰まった物語の集まりに、思わず涙が流れた。

大切な人が余命宣告されたら?
事前に準備して、後悔しないように最大限動いて、心の準備をして。
それでも「その日」になると、全てが無駄だったかのように時間が過ぎていく。
そして「その日」はだんだんと遠のいていく。
思い出すことは日増しに減っていく。それでも絶対に、忘れはしない。

父が突然亡くなった日、そしてその後の日々のこと。
そして三年前に母が癌告知された時のこと。
いろんなことが、読んでいる間に頭のなかで蘇った。

泣きながら、苦しみながら、それでも徐々に日常を取り戻して、笑える日がだんだんと増えていく人間の強さ。
とても素晴らしい、と思う。

レビュー投稿日
2015年6月9日
読了日
2015年6月9日
本棚登録日
2015年6月9日
6
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