朝霧 (創元推理文庫)

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本棚登録 : 1628
レビュー : 167
著者 :
しろコシオさん 北村薫   未設定

日常の謎の開祖である氏の、円紫さんと『私』シリーズの現在における最終章です。

ミステリー界の記念すべき氏のデビュー作『空飛ぶ馬』を読んだのは10年ほど前だったと思います、それ以来シリーズを読んできましたが間が空き空きで、前作『六の宮の姫君』でちょっと疲れました。

これでシリーズめでたく読破!となりました。三つの短編からなっていますが、それぞれの完成度は過去と比べても非常に高い!と感じました。

謎解きというテーマに照らし合わせれば三つの短編ですが、過去から連綿と続く『私』一人の女性の成長ストーリーとしてみるならば一大長編であり、やや疲れた六の宮~で示された伏線が効いてきたりしてました。

空飛ぶ~では女子大生だった『私』が卒業し、社会人となり出版社で働き始め、円紫さんが解き明かす謎も、『私』にとってより身近な人の男女関係の機微であったり、己のルーツを辿る過去との邂逅であり、それがもたらす現在の運命の偶然と必然が、その先を感じさせる書き方で、よりリアルに『私』を生身の女として感じることができました。

それにしても作者の書物のみならず落語、歌舞伎、俳諧、短歌と古典芸能全般における知識の半端なさには、驚くというか、ついていけない…というか、まぁ凄いです。

国語の教員をされていたそうですが、国内外を含めてエライ大学の教授レベルではないかと思います。『私』も女子大生というか助教授くらいじゃない?とは感じてました。主人公が現実的に感じられなかったのはその点です。

まぁ『私』が本を読むこと読むこと!果たしてリアルの女子大生がこんなに読むもんかな?とは思うものの、作者の書物に対する愛情所以だろうと理解はできます。またサブキャラの、正ちゃん、江美ちゃん、『私』の友人の描き方がごく自然に感じられたところが、『私』を普通っぽく感じさせるスパイスになっていたと思います。

しかし、今作ではやっと というか、『私』に恋の訪れらしき著述があるものの、匂わせたところで了の文字…以来このシリーズ描かれてないのです…

シリーズを通して、ホントゆっくりゆっくり大人っぽくなっていく『私』を、作者は円紫さんの目で静観することのみで喜びとしていたのでしょうか?自ら手をかけることなく自然のままに、理想的な変貌を遂げていく女を、読者に提示しておいて先は語らず というのが現時点ではとても残念に思います。

それはそれで、かわいいなぁ~で嫌いではないのですが、社会に出て男と付き合ったこともない、もちろん処女です!そんな『私』の純潔が散らされ、傷ついて、さらに一つ女の磨きがかかって…という物語を期待してしまうのです。

おじさん的エロ思考で恥ずかしい限りですが、滞った物語の続きを待っているファンは多いと思います。

最後に長年の謎が解決されないままに終わってしまったことがすっごく気になります。主人公『私』の名前が最後まで明かされませんでした!

これは作者の意図があるのか?シリーズの中に手掛かりがあるのか?わからないままになってます、これは現代ミステリー界の七不思議に数えられます!個人的にですが…

どなたかこの答知りませんか?

レビュー投稿日
2012年2月23日
本棚登録日
2011年5月30日
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