星を継ぐもの (創元SF文庫)

4.12
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本棚登録 : 9486
レビュー : 1160
制作 : 池 央耿 
しろコシオさん 海外作品SF   未設定

ハードSFなるジャンルの代表作であり、同時にミステリとしても成立しているという。創元文庫において普及のベストセラーらしい。予備知識はあり以前から気になっていたものを読了した。

様々な書物を読み終えて感慨にふけることは、どのような読者にも共通した行為であろう。その意識のベクトルがどこを向くのか?これは千差万別人それぞれである。今作を読了後自分の思いはただ「SF作家なる人は=科学者ではないか?」ということだった。

さほど遠くない未来、月面で真紅の宇宙服を着た人類の遺骸が発見された。しかしながら各国で行方不明の者など皆無である、どこの誰なのか?調査の結果、遺骸の年代測定は5万年前のものである、ということだった。

5万年前の遺骸はいったいどこの誰なのか?なるほどSFでありながらいかにもミステリ的謎である。この謎を解明すべく様々な専門スタッフが絡み合い議論をかわしながら真相を探る。多分に専門知識が要される箇所もあったが、訳も丁寧なのだろう、なんとか理解しつつも?読み終えることができた。

様々な仮説、それを裏づけ実証する証拠がページを飛び交う。それに対する反論があり、さらに裏づけ証拠と…あたかもディベート的流れで話は進む。さらに新しい事実が発見されさらに仮説が立てられる。このような流れが実際の科学(いかなる分野においてもだが)においては当然なのだろうが、ここでの仮説や反論、新事実などは圧倒的に意表をつくものであり、読み進むうちににわかサイエンティストとなった読者を(自分もである)そうなのか?!?本当か?!と絶句させる。

最終的には人類の起源は?という問題に帰結するようだが、そこにいたる過程において、様々な実際の科学上の問題を、作者ジェイムズ・P・ホーガン氏はSF的に解釈を与えているようである。SF的なる言葉の意味にとどまらず自分には、彼の解釈こそ真実なのでは?と思えた。この創作力なのか?科学的解釈からなる仮説なのか?は実際氏のレベルになればほとんど差はないのじゃないか?SF作家なのか?科学者なのか?これに差はないと感じさせる迫力なのだった。

とにかく次々と繰り出される真実、仮説、実証と迫力に押し切られて読み進められる。最後にはミステリ的真実の反転も見られ、この分野での評価も正当と思えた。

自分的にはやや疲れ気味でページを終えようとした時、エピローグでの一文がプロローグに戻って大いなる余韻となり、疲労が暖かなるモノに包まれる気がした。自然とつぶやいていた。

「やったんだな…コリエル」

レビュー投稿日
2013年2月27日
本棚登録日
2012年12月1日
5
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『星を継ぐもの (創元SF文庫)』のレビューへのコメント

Chiehimaさん (2013年2月28日)

この、ディベートの積み重ねで真実を突き止めていく形が、方向性は違うのですが、映画〖12人の怒れる男』を思い出しました。

しろコシオさん (2013年2月28日)

Chiehimaさん
コメントありがとうございます、おっしゃる通り「12人~」に通じるものがありますね。映画も最初これがどうやったらくつがえるのか?と途方にくれる思いでしたが、そこからが緊張感あって面白かったですね!

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