昭和戦前期の政党政治: 二大政党制はなぜ挫折したのか (ちくま新書 983)

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  • 筑摩書房 (2012年10月1日発売)
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男子普通選挙とともに訪れた本格的政党政治の時代は、わずか8年で終焉を迎えた。待望久しかった政党政治が瞬く間に信頼を失い、逆にそれほど信望の厚くなかった軍部が急に支持されるようになったのはなぜか。宮中やメディアといった議会外の存在、大衆社会下におけるシンボルとしての天皇、二大政党による行き過ぎた地方支配など、従来の政治史研究では見過ごされてきた歴史社会学的要因を追究する。現代日本の劇場型政治と二大政党制混迷の原型を、昭和戦前期に探る試み。(2012年刊)
・はじめに
・第1章 護憲三派と政党政治の新生―政友会の分裂から第二次加藤高明内閣まで
・第2章 「劇場型政治」の開始―第一次若槻礼次郎内閣
・第3章 天皇・非政党勢力・メディア―田中義一内閣
・第4章 ロンドン軍縮会議という岐路―浜口雄幸内閣
・第5章 満州事変と政党政治の危機―第二次若槻内閣
・第6章 政党政治の終焉―犬養毅内閣
・まとめ
・あとがき

本書は、昭和戦前期の本格的政党政治の時代を分析したものである。原敬暗殺後、後継の高橋是清内閣が行き詰まり内閣は総辞職、加藤友三郎、山本権兵衛、清浦奎吾と非政党内閣が続く。1924年に政友会が分裂。第十五回総選挙の結果、大命は憲政会総裁加藤高明に降下する。以後、若槻、田中、浜口、若槻、犬養と二大政党制が機能したが、犬養亡きあと、斎藤実(海軍軍人)への大命降下となり政党政治が終焉するまでを論じている。
これまでは、政党の汚職や党利党略により争いが激化し、軍部に付け入る隙を与え、政党政治が自滅したものと理解していたが、本書を読むと、事情はより複雑であることがわかる。
当時の社会的な背景としては、普通選挙を導入したことにより、政策論争だけではなく、政治シンボルの操作が最も重要な政治課題となる劇場型政治が始まる。それが政権交代を実現するための手段として意図的に用いられていく事がわかる。(朴烈怪写真事件、不戦条約問題、統帥権干犯問題、天皇機関説問題)
また、この時期、軍人の社会的地位が著しく低下していた事も無視できないという。背景には行財政整理にともなう軍縮がある。政府はマスメディア(新聞)の後押しを受けて軍縮を進めるが、この時期の政党側の軍人軽視傾向が軍部台頭の真因であったという。
満州事変後、マスメディア(新聞)世論は、事変前と変わって大旋回する。戦争報道によって大きく部数を伸ばした新聞は、新聞経営の立場を優先させ軍部台頭の片棒を担ぎ、政党政治の崩壊に手を貸すこととなる。
いくつか興味深い点がある。元老西園寺公望の加藤高明の高評価、ロンドン海軍軍縮問題を巡る考察(条約批准には成功したものの、政党外勢力への政党政治の依存の危険性)、最後の元老が果たした超法規的役割や宮中勢力による天皇の輔弼(天皇の宮中の満州某重大事件の処理を巡って天皇は田中首相を叱責するが、これは個人的意思で偶発的に行ったわけではなく、宮中のアドヴァイザーのアドヴァイスを受けつつ行ったことだという。)など、戦前期の政治を理解する上で参考になった。

著者は当時のマスコミについても厳しい見方をしているが、現在に至っても本質に変わりはないのではないか。社会の木鐸たる見識もなく劇場型の報道に終始する現状をみると既視感を感じずにはいられなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史(戦前)
感想投稿日 : 2014年4月12日
読了日 : 2014年4月12日
本棚登録日 : 2013年1月5日

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