f植物園の巣穴 (朝日文庫)

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本棚登録 : 1209
レビュー : 147
著者 :
ピッピさん 梨木香歩   読み終わった 

この物語は宮澤賢治の童話の世界に出てくるような豊かな自然界が舞台になっています。主人公の佐田豊彦は水生植物園の園丁です。1年前からの任地であるf郷で、彼は歯の痛みに襲われ歯医者に診てもらいにいきます。そこでは奇妙な体験が待っていました。治療してもらった歯医者の家内は前世では犬だったというのです。このように夢ともうつつともわからぬまま、この界隈で不思議な生き物たちと出会い、さらに幼児の頃の体躯になっていった彼は、川で泳いでいると一人きりでいるカエル小僧と出会います。見捨てておけないままカエル小僧の後についていった彼は、その問答の中でついにカエル小僧が誰なのかに思いあたります。幼い頃大叔母から聞いたというアイルランドの妖精譚や抜けた乳歯を縁側から屋根に投げるという風習にまつわる秘話、祖先が譲りうけたという屋敷にまつわる切腹の話など、記憶は過去と現在、死者と生者とがいっしょくたになりながら果ては「千代」という名の現世での妻との確執にたどりつくのでした。この異次元の体験は実際のところは植物園の大木のうろ、すなわち巣穴に落ちて人事不省に陥った二日間のできごとだったということが明らかになるのですが、そのお蔭で未来につながる明るい話題でお話は幕を閉じるので、読後感は気持ちの良いものになりました。

レビュー投稿日
2013年12月19日
読了日
2013年12月17日
本棚登録日
2013年12月19日
3
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