発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年 (単行本)

4.45
  • (12)
  • (9)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 113
レビュー : 13
著者 :
M's Bookshelfさん  未設定  読み終わった 

この本の主人公は、知的障害を伴う自閉症の男の子を育てるお母さん。
自閉症という障害に向き合う中で感じる母としての葛藤、障害を受け入れていく過程と、決してぶれることのない我が子への溢れる愛情が描かれています。

自閉症についても、わかりやすく説明されていました。
自閉症は先天的な脳の疾患であり今のところ原因不明、治療法なし、自然治癒もない。
自閉症には、知的障害を伴うものと伴わないものがあり、自閉傾向の強さや知能の高さには大きな幅がある。共通するのは、社会性の欠如や共感能力の欠如。つまり「相手の気持ちが分からない」(相手の気持ちを知りたいとも思っていない)。

主人公であるお母さんは、我が子の自閉症と向き合いながら、まずは、障害がある事実を受け入れ、我が子の自閉傾向との付き合い方を少しずつ体得していきます。その過程は、奮闘としか表現しようのない、大変な道のり。障害を受容するにも、一度に全てを受け入れるということではなく、壁にぶつかりながら、何段階もかけて、受け入れていきます。

少しでも我が子に良いものをと、医療機関に療育施設、スイミングスクールと、距離や時間、手間を厭わず試行錯誤を繰り返して最適な施設を探し回るお母さんの粘り強さと実行力は、誰でも真似できるということではなさそう。でも気持ちはよくわかります。精力的な活動を通して、お母さんは、それぞれの分野での専門家や、障害ある子どもを育てる親たちと出会い、助言も得ていきます。お母さんも男の子も、まだ若い。でもそろそろ「親離れ」を考える年齢に差し掛かっているとのこと。この本は、親子のサクセスストーリーではなく、まだまだ試行錯誤中の途中経過といったところ。だからこそ、社会が持つ課題を読者に突きつけているように感じます。

この本を読んで思ったことは、なにかの病気があり、それが原因で健常者と同じような社会生活を行うことが難しい人が、あまり障壁を感じずに生きていくためには、やはり、社会全体での相互理解が不可欠だなぁということ。
この本の中のお母さんを必死で走り回らせた要因の一つは、障害がある子どもが、どう育ち、大人になった時にどのような生活を送っていくのか、(病気故に自らは入り込めないであろう)社会にどうやって安心できる居場所?生活基盤?を見つけるのか、そうした展望が見えない不安感でもあったのではないか。そう考えると、これは必ずしも障害がある子どもに限らず、子どもの将来に幸あれと願う親が子どもの行く末にな関して持っている不安とあまり変わらないかもしれない。こうした不安を持って子育てしているお父さん、お母さんが、今の日本には沢山いるのかもしれません。
社会全体で、病気や障害についての知識が共有でき理解が進めばなおよし、それに加えて、特にこうした障害ある子どもと生きているお父さんお母さんが、子どもの将来に対して、社会に対して、不安を抱きながら過ごしていることに、みんなが理解し合えたら(自閉症のような病気でない限り、相手の気持ちを分かろうと努力することができるはずなのだから)、何か変わらないかなぁと、思いました。

医師である著者は、お母さんの話を聞きながら、お母さんの奮闘と男の子の成長をレポートしており、お母さんの目線で記しながらも客観的な視点も残されているようで、素直に共感できた気がします。

読んでよかったと思える本でした。

レビュー投稿日
2019年1月22日
読了日
2019年1月22日
本棚登録日
2019年1月22日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年...』のレビューをもっとみる

『発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年 (単行本)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする