江戸時代の、桶、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官それぞれの職人の短編話集

わたし自身も職人環境に身を置く立場なので、ものすごく刺さる漫画でした。
それもだけど漫画のコマのカメラアングルとか画力や丁寧さも見入ってしまう。

百年後のはなしとか出てきてましたが、わたしももしかしたら百年後にも残る仕事内容だから、万が一百年後のひとに見られることがあったら、「これいいなぁ」って思って貰える仕事をしたいなと思いました。

良い漫画……


2024年3月9日

「古代史の読み直しと、わかり易い神社史入門、というつもりで書いた(あとがきより)」1983〜1985年に行われた講座内容をまとめられた一冊。

大神神社、伊勢神宮、宗像・住吉大社、石上神宮、鹿島・香取神宮、各々の氏神等で各章を構成し、王権との関わりを主軸にこれらの古代における在り方を考察する。

個人的には、氏神の祭りの章がなかなか興味深い内容でした。

2023年3月10日

カテゴリ 歴史(古代)
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アニメーション映画『犬王』原作
室町時代、時の将軍は足利義満のころ。猿楽の能の頂点を求めた父の呪詛によって犠牲になり、醜く穢れた姿で生まれ落ちた犬王。
平家と共に壇ノ浦に沈んだ草薙剣の光によって盲目となり、琵琶法師となる友魚。
2人が「平家物語」によって固くむすばれ、解放され、縛られていく。

リズム感を重視されているのか、出来るだけ短く区切られた文体でつづられていく物語です。
個人的に文章だけではイメージが追いつかないところがあって、わたしは先に映画を見ていて良かったとおもいます。

映画と原作と比較できて、演出方法に学べたのが何よりおもしろい。
犬王と友魚の関係性が好きです。

「さあ、お前、光だ」
互いが互いを照らす、その果てに。

2022年6月16日

カテゴリ 小説
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「旅」をテーマにした短編集。
あとがきに短編は、「短い話で大きなものを描く楽しみがあります。詩に似ています。」とあって、まさに、詩集のようでした。

十三篇の旅のひとひら。
ひとつひとつ積み上げて、一歩一歩進むことを噛みしめました。

2022年4月29日

奈良を舞台に繰り広げられる、神社の娘の少女と修験者の少年の物語。

主人公たちは普通には見えないモノが見えてしまう人々。見えない世界を扱う話なので「ファンタジーもの」と括られてしまえばそれまでなのですが、本著はそれにとどまらない。

宗教者の家、宗教者の立場にいる彼らは心に齟齬と悲しみと悩みと闇を抱えて、それでも目指すべき浄らかな世界との間で迷いながら成長していく。

時間経過も小学生から中学生、高校生、そして大人へ踏み出す大学生へ。
各章が構成さてれています。
はじめはどんな結末になるのだろうと見えなかったのですが、そんなことに……と、クライマックスは一気に読み切りました。

精神のジュヴナイルを見せてくれるお話です。

2021年10月19日

カテゴリ 小説

関西を中心とした社寺史跡などを巡る紀行エッセイ。
葛城、吉野、山城、近江、丹波、美濃、越前……古い信仰や里山への目線に、筆者の美意識を感じられる。

わたしが本著を知ったきっかけは、和歌山にある丹生都比売神社という大好きな神社とその所在地である天野の里を筆者も訪れており、その賛美した文をみたところからでした。

花の時期に、毎年必ず訪れることにしている丹生都比売神社です。
急な山坂道を、車は青息吐息で登ります。
両側から木々の迫る道の切れ間から眼下に紀の川が見えると、その高さに感嘆します。
道々にはところどころ山桜が咲き、とつぜん目の前が開けたかと思うと、そこには花を湛えた里が広がっているのです。
天野はまさに「かくれ里」と呼ぶにふさわしいところだと、感じています。

そのような各地の閑かな土地を次々と紹介されていく本著。
刊行されたのは1971年ですので、いまやもう失われてしまった里の訪問譚も。
(ダム水没前の川上村の丹生川上上社)

「危ないのは、自然に育った山野の木で、うっかり天然記念物にしようものなら、すぐ虫がつく。文化を食いものにする虫である」
彼女が伝えたかったのは、各地のかくれ里そのものではなく、その背景にあるものとそれが崩れていく危機感だったのかもしれない。

2021年10月8日

読書状況 読み終わった [2021年10月8日]

『日本書紀』『続日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』以上を「六国史」と総称される。

その六国史のはじめ。『日本書紀』が完成に至るまで、はたして他に歴史を記した書物は何があったのか。そしてそれらはどのように繋がって、『日本書紀』に到達したのか。

帝紀、旧辞、天皇記、国記、上宮記、古事記、先代旧事本紀……後世残るそれらの欠片から、先達たちの研究を踏まえて推測を重ねていく本書。

可能性の域は出ないものの、非常に細かく詰めていらっしゃいます。
個人的には、雄略天皇の時期における帝紀と旧辞の章が面白く思いました。

2021年6月17日

カテゴリ 歴史(古代)
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「『日本書紀』は天皇の命令によって編纂された国家の歴史書である。(略)それは天皇の歴史を記す書物であり、それによって日本の天皇の政治思想を明らかにしようとする書物であった」

8世紀、編纂され完成に至ってから今日まで、日本書紀はその後のさまざまな歴史書や家牒、または歴史そのものへなど影響を及ぼし、日本書紀に倣うもの反発するものと、「歴史や政治の原点になる書物として君臨してきた」。

その影響をひとつひとつ解説し、存在感を確かめていく。

いかに日本書紀が、いまだに大きな歴史認識の壁となって立ちはだかっているのか。手軽に知ることができます。
まさにそれは日本書紀の呪縛。

2021年4月14日

飛鳥から奈良にかけての時代。それは女性の天皇が多く立った時代でもあった。

主人公は元正天皇(氷高皇女)。
天武天皇と持統天皇の孫、元明天皇の娘、文武天皇の姉。
本作品では彼女の血統の中にある「蘇我氏の血」を主軸において、藤原氏(不比等)と対立するよう物語を進められています。

しかし、文章全体に品を感じられて、さらに物語としてとても完成度が高いなと感じました。

凛として清らか、気高い女性として描かれた氷高皇女を読んでいただけると思います。

2021年3月14日

現在広く定着し、そのイメージにおいてほぼ誰もが疑わずに同じ答えを述べるであろう「卑弥呼」。
彼女ははたして、「政治は男が行い、女は巫女」という社会の「神秘的な未婚女性」という古代支配者だったのか。
その疑問を軸に近代化によって固定されてしまった卑弥呼像を、魏志倭人伝の読み直しや日本書紀や風土記の女性支配者との記述の照らし合わせ、古代の戸籍、古墳の被葬者の男女差などによって洗い直す。
それは、「男と女を分ける」歴史の流れの見直しでもあった。

昨今よく耳にし、叫ばれるようになったジェンダー問題。
それが卑弥呼のイメージにまで及ぶという。
個人的に印象に残った項は、日本書紀の雄略天皇(ワカタケル)と倭人伝の卑弥呼の対比でした。

歴史を読む上で知らず知らずのうちにかけている現代男女差の眼鏡。
それを取り払うきっかけになると思います。

2021年3月2日

カテゴリ 歴史(古代)
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乙巳の変前を起点に異変の起こる飛鳥京と山々の怪異を、物部氏の娘・広足と役小角が解きほぐしていく飛鳥時代ファンタジー。

中大兄皇子や中臣鎌足、賀茂氏の長の大蔵という朝廷側の国造りの思惑。
その国に組み込まれることを拒む山の人々と神々。
互いの存在を脅かすことなく、暮らしていけるのか…。

鬼が跋扈し験力が飛び交う、という描写は歴史モノのエンターテイメント小説としてライトなイメージを受けます。
が、その深いところにあるテーマはもしかしたら、「多様性を認め合う」ということなのかもしれません。

アニメ化が似合いそうな小説です。

2020年10月29日

カテゴリ 歴史(古代)

「奈良というところは地上でもっとも月に近い場所なのかもしれない」

その一文に、わたしはひどく共感した。
わたし自身、奈良の空に昇る月に惹かれて、この地に住むことになったようなものだから。

自叙伝とも自作自演ともわからないこの四作は、すべて現実と虚構の境目が曖昧模糊としている。

阿呆だった鹿はとつぜん神性をあらわにするし、蘇我入鹿はロケットランチャーをぶっ放す。

一作一作もそうだけれど、一冊としても「完成された現実のような嘘のような世界」が広がっている。
これは短編集などではなく、これ一冊がひとつの物語だ。

奈良はまことに不思議な土地だと思う。
畑を耕す気楽さで、数十センチ。そのすぐ下には千三百年以上前の世界が広がっていたりする。
この本はまさに、その境目をもっている。

わたしが惹かれた月はもしかしたら千三百年前の月だったかもしれないし、そうだとしても何の不思議もない。
だってここは奈良なのだから。

そう思わせてくれる、魅力的な一冊です。

2020年9月24日

鉄を主軸に語られる、古代の姿。

弥生時代には国内製鉄が行われ、製鉄と鍛治は段階を経て高度化する。そしてそのヒントは祭祀の場に残っている、という説を展開します。

本書によると、弥生時代の製鉄とは「褐鉄鉱」を用いていたとしています。やがてより硬く腐蝕しにくいタタラ製鉄の技術に代わられていく。

その流れと鉄の影響を、各地の神社祭祀、地名、史書、伝承、考古などの様々な面から、可能性を見出しています。

褐鉄鉱は湿原の葦などの根元に塊としてできる。
その鉄を用いて、稲作が進められる。
「豊葦原の瑞穂の国」は鉄と稲の両輪を示すものである…。

本書は昭和60年に刊行されたものの文庫化ですが、古さを感じさせない、興味深い内容でした。

2020年9月16日

カテゴリ 歴史(古代)
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奈良時代の光明皇后を主人公に、長屋王の変をメインに据えた時の政争とひとびとの生きざまを描く。

葉室作品らしいまっすぐさを、殆どの人物が備えて描かれています。貫きたいものがそれぞれにあり、その為に手を汚すこともある……というような。
その中で光明皇后がつねに光たらんと生きる姿は、まさに葉室作品の女性像という感じです。
妖術使いがいたり、ややエンタメに寄っている印象を受けましたが、それは中世以降の時代物には出てくる殺陣のシーン等が描けない時代で、どう盛り上げるかのバランスだったのでしょうか。

それぞれの人物像の解釈の違い等で、もしかしたら好みは分かれるかもと思われますが、この作品において個人的には元正天皇(氷高皇女)の描かれ方が好きです。

2019年10月11日

カテゴリ 歴史(古代)

稀代の仏師運慶の生涯を描く時代小説。
醜い顔に生まれついた彼は、美しさに焦がれた。父の康慶に連れられ、玉眼を見た長岳寺。そして初めて己ひとりの手で仕上げた円成寺の大日如来を皮切りに、彼の仏師としての人生が始まる。
彼を通りすぎる数々の女性、源氏と平氏の争い、朝廷と源氏の駆け引きの渦の中で彼は、奈良仏師の集団を一流に引き上げて行く。

運慶の描かれ方に好みが分かれるかな、と思います。
仕事一途な男…それは反対に仕事だけを見つめ続け伴侶や子どもを置き去りにして行く男、というステレオタイプの男性像が投影されているなと感じました。

しかし、数少ない史料や現存する仏像などから運慶の生涯の物語を組み立てたことに、敬意を表します。

2019年8月21日

カテゴリ 小説
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彼女は誰にも言えない秘密を抱えていた。そして、憧れの存在とされている先輩もまた、秘密を抱えていた。大人たちの思惑の狭間で、少女と少年は手を取り合う。痛々しくも未来の欠片を秘めたジュヴナイル。

主軸自体が重たいので、主人公の少女と同じ経験や思いをしていた人が、つらく感じるのではないかと思われる描写もあります。

ラストは、イミテーションの宝石のような輝きの希望だったとしても、とても美しい。

2019年8月20日

カテゴリ 小説

「これまでの国民史的なとらえ方のなかでは主要なテーマとなりえなかった、列島古代史に根深く、また越境的にからみつくアジアのネットワークを、積極的に拾い上げ(本著「はじめに」より抜粋)」られた書。

ともすれば国単位で語られがちな古代の国際交流や商い、渡来の動きを地域・個人単位で、相互に与えあった影響や思惑などを、多層に多元に分析されていると思います。

またこのような他国にからむ主題は、取り上げた時期、つまり「その時の現在の時代・今」のフィルターをかけて分析されがちだったことを前提として、それを払拭し、より冷静に見つめ直す事を提示されているとも思います。

この書に現代のグローバリズムやナショナリズムを当てはめて「今も昔も変わらない」というような同調や「昔は今より遅れていた」という先入観はナンセンスです。

境界を越えて生きていた古代と人々を、ぜひ感じていただきたいところです。

2019年6月14日

カテゴリ 歴史(古代)
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甘美なのか、退廃なのか、滑稽なのか、残酷なのか。人が持つさまざまな「毒」を飲むような11編の短編物語集。
短編に収めるためか、掲載誌の傾向だったのか、ひとつひとつの物語の収束がやや急激な印象でしたが、久しぶりに山田詠美の毒に触れました。「サヴァラン夫人」と「蛍雪時代」がお気に入り。

2018年9月21日

カテゴリ 小説
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東漢氏、西漢氏、秦氏、西文氏とフミヒト系氏族、難波吉士を章別に取り上げ、各氏族の要点を簡潔に、ポイント押さえてまとめてくれている、渡来氏族の概要。ガイダンス本とでもいうべきか。手に取りやすい新書。

2018年9月21日

カテゴリ 歴史(古代)
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神の供物としての「人身御供」とはいかなるものか。
伝承や文献、様々な祭りにおける供物、人が負わされる役割などを通して解体していく。

タイトルはセンセーショナルですが、内容は堅いです。
まず、多くの人が抱く「人身御供」の固定したイメージに疑問を抱かせ、しっかりとした考察のもとに提示される可能性。
示唆に富んでいるように思います。

2018年6月5日

カテゴリ 民俗・文化

少年ダヴィーが寝台列車の中でたどり着いた寝台車両には、たくさんの傷付いた少年たちが居た。彼らはその脚に着けた信書管を託そうとする。
かつて戦地の通信手段として遣われていた、軍鳩をモチーフにした物語。
鳩山郁子さんの作品独特の玻璃のような果敢なさに加え、この作品には力強く痛ましい雰囲気も。どうか無数に散った迷える鳩たちが、彼らの家に帰れますように。

2017年9月27日

カテゴリ まんが

日本神話に出る「櫛名田比売」と「丹生都比売」に焦点を当てて、筆者独自の目線からこの姫神の正体を探る。感性的で、やや無理のある繋げ方もあると思いますが、神社御由緒などのフィールドワークを丁寧にこなしておられる様子が伺えます。

2016年9月20日

カテゴリ 歴史(古代)

アイヌ民族について、世間に広く流布しているイメージ・ラベリングされた既存の概念を丁寧に剥がして、解説、訂正しておられると思います。タイトル通りの入門的な読みやすさですが、内容はしっかりと濃いです。

2016年9月20日

カテゴリ 民俗・文化

かつて鹿島神宮の阿礼乎止売であった白妙は、夢解きの名手であった。兄で同じく阿礼乎止古であった黒妙が勤めを行っている新益京に、御名部皇女の夢解きの為に常陸国日枝郷から呼ばれる。
その夢を解くうちに、彼女は讃良皇女の心に滑り込んでしまい、やがて、夢に纏わる秘密を知ってしまうが、太上天皇となっている持統天皇に感づかれてしまい…。

坂東眞砂子作品らしい、仄暗い物語展開だったと思います。

散りばめられた夢のヒントと歴史的事象、宗教観、持統天皇の心の襞を織り交ぜ、ひとつの恐ろしいラストへ導く手腕はさすが。

春過ぎて 夏来たるらし 白妙の
衣干したり 天香山

この歌に、こんな顛末を付けてしまうとは…
恐ろしくもエンターテイメント性の高い物語です。

2015年6月10日

カテゴリ 歴史(古代)
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