あの日、君は何をした (小学館文庫 ま 23-1)

  • 小学館 (2020年7月7日発売)
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悲しみの形は一つではない、と思えた一冊でした。
真面目で人気もあって、地域で一番の高校に受かっていた息子が、ある日、深夜2時に自転車に乗っているところを、連続殺人犯と勘違いされ事故死してしまう。
急に息子を亡くしただけでも辛いのに、夜中になぜうろついていたのか?職務質問をされなぜ逃げたのか?と世間から非難を浴びる。
息子を亡くして、心を病んでしまった母は、自分と100%同じ気持ちで苦しんでいない夫や娘に苛立ちを感じてしまうのだけど、夫や娘が苦しんでいないか?悲しんでいないか?というと、決してそうではない。
母(妻)と同じように悲しみを表に出せない自分は冷たい人間なのか?と自分をどんどん責めていってしまう。
でも、それだけではない。母は母で、『家にいるのがイヤだったから夜中に家を抜け出していたんだ』と言われれば自分を責め、『いつまでも泣いていないで前を見ろ』と言われればまた自分を責める。
大事な人を亡くしたらみんな、誰だって悲しいんだ!苦しいんだ!
心はその人だけのもの。心に“こうあるべき“なんてものはない。
周りに惑わされず、一人でそっと悲しむ、苦しむ時間があればいいのに。
本当は家族みんなで気持ちを分かち合えるのが一番なんだろうけど、それぞれの心はそれぞれのものだから、きっとみんなが同じ気持ちになるのはとても難しい。
悲しみの形は一つではない。自分の心は自分で大切にしてあげないと。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年4月17日
読了日 : 2022年4月17日
本棚登録日 : 2022年4月17日

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