know (ハヤカワ文庫JA)

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本棚登録 : 1697
レビュー : 222
著者 :
制作 : シライシ ユウコ 
ま鴨さん SF(日本・長編)   読み終わった 

西暦2081年、極度に発達した情報化社会に対応するために子供の頃から「電子葉」を脳内に埋め込むことが義務化されている社会。情報庁のエリート・御野連レルは、かつての恩師・道終常イチが世界一の情報産業企業アルコーン社の機密情報を持って失踪したとの情報に接する。常イチからの特殊な暗号を読み取った連レルが向かった先で出会ったのは、常イチが手塩にかけて育ててきた「量子葉」を持つ少女・知ル。電子葉とは格段に異なる高度な情報処理能力を持つ量子葉を開発した常イチは、連レルに「この子を頼む」と言い残して自らの命を絶つ。それは、量子葉を狙う各勢力の追跡から逃れるための連レルと知ルの逃避行の始まりだった・・・。

脳に機械を埋め込んで処理能力をアップさせ「超人」を生み出す、というアイディア自体は、従来からよくあるSFの超定番のひとつです。そんな使い古されたテーマではありますが、古い歴史と最新の情報技術が混在する未来の京都を舞台に疾走感溢れる現代的な文体でぐいぐいとストーリーを押し進め、なかなか読ませる作品になっています。
登場するキャラクターの描き方が良くも悪くも「今風」で、かつ理屈抜きにイメージ先行で強引に展開する場面も目に付き、古いSF読みの鴨にとっては「おいおい」と突っ込みたくなる要素も満載なのですが、最終的なSF的アイディアの「オチ」が小松左京「ゴルディアスの結び目」を彷彿とさせるアバンギャルドさで、そう来たか!と膝を打ちました。

鴨が印象的だったのは、SF小説としての「絵的」な展開。
「SFとは絵である」、とはよく言われることですが、この作品から受けるヴィジュアルは当初から映像化を想定しているかのようなある意味「わかりやすい」派手さが感じられ、旧来のSF、即ち文体の特徴やリズムといったものから自律的に想起されるヴィジュアル(エリスンやディレイニーやティプトリーの作品に感じられるような)とは本質的に異なる何かを鴨は感じました。SFの「見せ方」が変わってきた、ということですかね。古いSF読みとして、ちょっと時代を感じましたなー。

レビュー投稿日
2017年7月20日
読了日
2017年7月10日
本棚登録日
2017年7月5日
2
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『know (ハヤカワ文庫JA)』のレビューへのコメント

たまもひさん (2017年7月21日)

こんにちは。
私も「古いSF読み」ですが、これは面白く読みました。ついていけんわ~と思うところも多々あったのですが。

もしかして以前「たなぞう」でも書いてられましたか?アルファベット表記のハンドルネームで。違っていたらごめんなさい。
プロフィールにある、インコの名前は「志ん鳥」というのに笑いました。いいですねえ。

またお邪魔させてください。

ま鴨さん (2017年7月21日)

たまもひさん、コメント&フォローありがとうございます!
「たなぞう」にはあいにく投稿していないのですが、私と同じテイストのレビュアーさんがいらっしゃったんですかね。ちょっと嬉しいです。SF限定の偏向甚だしい本棚ではありますが、良かったらまた遊びにいらしてください。お待ちしております!

因みに、2羽目のインコを迎えることになったら、名前は「圓鳥」にするか「米鳥」にするかで悩んでおりますヽ( ´ー`)ノ

たまもひさん (2017年7月22日)

勘違いだったんですね。どうも失礼しました。たなぞうでもそうだったんですが、ここブクログでもSFの感想を書かれる方ってそんなに多くないので、もしや?と思ってしまいました。
私は「SF読み」と言うほど読んでないぬるい読者ですが、好きなんですよね。年とともに、こりゃ読めん…というタイプのものが増えているような気もします。

二代目の命名については、関西在住者なので「米鳥」に一票入れたいところです。

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