ヨハネスブルグの天使たち (ハヤカワ文庫JA)

3.70
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本棚登録 : 305
レビュー : 27
著者 :
制作 : みやうちゆうすけ 
ま鴨さん SF(日本・短編)   読み終わった 

日本の某メーカーが愛玩用として開発した少女型ロボット「DX9」。歌うことが主な機能の彼女らは、安価で改造しやすい低スペックの製品であったことから、世界各地で大量に購入され、本来の用途とは異なる目的のために改造・使用され、世界各地で降り続ける。ヨハネスブルグの高層ビルから、ニューヨークのツインタワーから、アフガンの戦場から・・・DX9が「降る」光景を共通項に、不穏な世界情勢の中でもがく人間像をリリカルに描き出す連作短編集。

少女型ロボットが、空から降ってくる。それも、時によっては雨のように大量に。
SFとジャンル分けするには、あまりに詩的で幻想的な世界。その一方で、舞台となるのは戦場であったりテロの現場であったり、現実の国際情勢を強烈に意識せずにはいられない設定となっています。読後感は「かなり伊藤計劃」ヽ( ´ー`)ノ伊藤計劃以降、こういうムードの世界観が流行っているんですかね。ただし、未来に多少なりとも希望を残すストーリーが多いところが、伊藤計劃との大きな違い。

確かに面白い作品です。洗練された筆運びにはただならぬセンスを感じます。この世界観が好きな人には、たまらない作品だと思います。
が、鴨的には残念ながらどうしてもしっくりこないところがあり、手放しで絶賛するには至りませんでした。しっくりこないところとは、語弊を恐れずに言えば「SFとしての説得力」です。耐久性の試験をするためだけに高層ビルを買収して毎日数千体もロボットを落っことすって、その会社はどんなコスト管理してるのか?安価で低スペックが売りのDX9に、どうやって人格転写できるだけの容量が確保できるのか?あの「9・11」をロボットを使って完全再現する意味って、結局何?・・・などなど、イメージ重視の人にはおそらくどうでも良い細かいことなんでしょうが、鴨にはそのリアリティの無さがどうしても引っかかってしまい、せっかく現実社会と地続きの舞台設定を採用しているのに何だかもったいないなぁ、という印象を得るに至った次第です。

と、ここで鴨がくどくどと述べるまでもなく、巻末の解説で大森望氏が「最後のところで論理よりも美を優先する反SF的な作風」と端的に表現しておられました。正にその通りの作風で、SFとして評価すること自体が筋違いなのかもしれませんね。気になる作家であることには違いないので、これからもチェックして行こうと思います。

レビュー投稿日
2016年4月30日
読了日
2016年4月24日
本棚登録日
2015年8月22日
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