股間若衆 男の裸は芸術か

  • 新潮社 (2012年3月30日発売)
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感想 : 38

いろいろ考えさせられた。

裸体彫刻が野外に出たのは戦後のことだ。その前は軍人や政治家など個人の業績顕彰のための銅像だった。という一文に目を開かされた思いがした。無名の若い裸体は自由と亡くなった若者たちの鎮魂を表しているのだ。なぜここに置かれたのか、なぜこのような形なのか、その歴史を調べてみるとこんなことがあったのかと面白く読んだ。

そして今裸体像は消えて行っている。駅前や公園にあったものが、再開発、道路や駐車場の拡張工事などで撤去され、戻ってこないのだ。

ヒトが衣服を着るようになったのはいつのことか。アタマジラミからコロモジラミがわかれたのは7万年前のことだそうで、遺伝子解析から分かったそうです。
美術がアートになっていく。無機質で抽象的な金属彫刻に置き換わっていると筆者は述べているがストリート彫刻には最近もう一つの潮流があると私は思う。それは「キャラクター」だ。

もう一つ著者が述べていないのは小・中・高校に置かれた野外裸体彫刻だ。戦後二宮金次郎の像がなくなったのはよく知られているが体の線をあいまいにした若衆は玄関先や中庭に置かれ、いたずらをして怒られる奴が必ずいたものだ。これも減ってきていると思う。生息地に入れたらいいと思う。

ゆっくりではあるが、関係者がいなくなり、建立された意味が薄れ、だんだん淘汰されていく時代が来たようだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年6月7日
読了日 : 2012年6月7日
本棚登録日 : 2012年6月7日

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