サウスバウンド 下 (角川文庫 お 56-2)

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レビュー : 350
著者 :
supmonsterさん  未設定  読み終わった 

この一家の父ちゃんは、いち保護者としてはほんとにどうしようもないんだけど、こんなセリフを言って実際に行動を起こしちゃうから許せてしまうんだなー。

奥田さんの小説に出てくる人たちは、みんな真っ直ぐに自分自身に人生をかけてるって感じがする。
人間として懸命に生きる。
やっていることや状況は違えど、みんな生の輝きを熟知しているようにみえる。
バカボンのパパ的な「これでいいのだ!」っていういい意味での開き直りが心地よい。

今、いじめや暴力を受けた時、子どもがまっさきに親や先生に頼るなんて言語道断というようなお話って溢れている。結局死にそうになるまで誰にも言えなかった……みたいな。

チクったら倍にして返される、大人に頼ったら卑怯という、なんでしょう子ども界の了解のようなものが世の中にまかり通っているからだよね。
この小説はそれを覆したのが良かった。
卑劣なことをされたら少々卑怯な仕返しをしたって大丈夫なんだぞ!と子どもに教えておく父親なんてそうそういない。でもこの一家の「おとうさん」は闇討ちしちまえなんて助言をする。
しまいには、優しいおじさんが、ヤンキー(敵)の腕をボキッとやっちゃってくれる。

まあそれが正義なんてことにはならないので、手段は別として、もっと子どもに逃げ場があることを教えた方がいいのかな、なんて思う。
圧倒的強者に直面した時は大人を頼りなさい。自殺なんかするまえに一緒に地の果てまで逃げちまおうぜと。

ほんとに二進も三進もいかなくなったら逃げたっていいと思うし、それが負けではないんだと思う。


このおとうさんも、結局革命は諦めて、孤独に自分の信念に従うを決めている。
自分勝手な生き方だけれど、こんなふうに生きることができればどんなにすがすがしいだろう。

物語は無政府主義、反国家、自由を求める超過激なおとうさんを持つ息子の話(主に)。
自由ってなんなのだろう?と考えると、とどのつまりそれは国家に屈しないことでもなく、税金を払わないことでもなく、心の在り方なんだと思った。

理想っていうのはハナから現実的ではないことなんだから、結果的に現実にならなくても悔やんだり蔑まれたりすることではない。
価値は結果ではなく、いかに素直に理想を語り、自分の正義に見合った行動をできるかで決まるのではないかとも思う。

最終的にこの一家は自由と結束を手に入れる。
うん、素晴らしい。それでいいんだよね。

私は自分の考え方が右翼に属するのか、左翼に属するのか思案することがあるけれど、
この本を読んだらそれがバカバカしくなった。
ゼミのおかげで首尾一貫した姿勢を持たなくては!って肩を張ってたけど、よく考えると常にどちらか一方の意見に賛成していくのなんておかしいや。
好きなものは好き、嫌いなものは嫌いでいいじゃないか!精神的な話ぐらい!と開き直ることができた。

思想とか国家とか体制とか共産主義とか、いろいろ突っ込んではいけなそーなシリアスな内容を
扱いながら、ここまで朗らかに後味良く終わらせる奥田さん、やっぱりすごい!
とっても考えさせられたし、とにかく西表島に移住したいと思わせる小説でした!

ちなみに一番この小説の中で強い精神の持ち主は二郎くんだと。
だって私、あんなお父さん持ったら早々にオルグされてるわ☆(笑)

レビュー投稿日
2010年9月10日
読了日
2010年9月3日
本棚登録日
2010年9月3日
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