(002)絆 (百年文庫)

  • ポプラ社 (2010年10月12日発売)
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本棚登録 : 224
感想 : 50
4

海音寺潮五郎 『善助と万助』
コナン・ドイル 『五十年後』
山本周五郎 『山椿』

どれも絆というタイトルにふさわしい、思わず目頭が熱くなってしまうような結末を
迎える話ばかりです。

『善助と万助』 じっくりと登場人物の人となりを読者の頭に想像させる文章がラスト手前まで続きます。主と部下の関係、同じ老中同士の関係、仲の悪い者同士の関係……。
それまで特に起伏のある展開があるわけでもないので、ラストまでなんとな~くな流れで
読んで把握していく人間関係の繋がりですが、ラストで急に「ああ、そうだったんだ」と
しみじみ心に訴え掛ける動きを見せます。
登場人物は血を持ち、肉体を持って、しっかりと芯の通った考えを持って生きてきた
ひとりの人間なのだと思わされます。
実在した人物を描いた歴史小説。きっとそれがこういうことなのだと感じました。


『五十年後』 最後は王道な終わり方なのに、王道がゆえに涙しました。
百年文庫はやはりいい。
この文庫を手に取らなければ、私はおそらくコナン・ドイルを、多くの人がそうで
あるように(と、私は自分の瑣末な自尊心のために信じたいが)、
コナン・ドイル=ホームズの作者としてしか知らないまま、この一生を
勿体無く終えていたに違いない。
大げさかもしれないが、多分実際そうなっていたのだから仕方がない。
とにかく、こんなものも書いてたんだ!という驚きを与えてくれたことで高評価。

『山椿』 一番内容が光っています。
結末はやはり予想がつくけど、ラストの人物たちの書き表し方が絶妙に胸にくる。
映像として完全に頭の中で物語が流れます。
爽快感?とでも言ったらいいのでしょうか。何一つ取りこぼしもなく、登場人物たちの上に
あまねく幸せを予感させてくれる結末でした。
どれだけ時間が経った昔の話でも、よいものは良い。それがこの物語。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2013年5月16日
読了日 : 2013年5月15日
本棚登録日 : 2013年5月16日

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