1994年、日本人を含む9人の漁師が、37日間の漂流を経た後にフィリピン沖で保護された・・・。
この本は、生存者の中で唯一の日本人だった船長を追った、ノンフィクション作品です。
約20年後に本人に取材しようとした著者は、その妻に衝撃的な話を聞きます。
それは、船長は10年前に漁に出たまま、行方不明になっている、ということ。
その事実に驚いた著者は、現地に赴き、彼の関係者を訪ね歩いて、1回目の漂流の様子と、2回目の漂流に至った経緯を調べます。
その過程で見えてきたのが、船長が生まれ育った沖縄県宮古島群島伊良部島佐良浜という地域の、特殊な郷土史とそこに暮らす人々について。
海に出れば食料を調達できる、逆に言うと漁師しか生活する術が無い、という環境。
その中でも特に、外部思考の強い佐良浜の漁師たち。
遠くグアムやパラオまで漁をしに行き、大きな富を得る。
でもしばらくすると、その漁が成り立たなくなる。
そんな、繁栄と衰退を繰り返してきた人たちだといことがわかってきます。
主人公である船長の足跡を追うことによって、海洋民としての佐良浜の人たちの気質や、その行動原理への理解が深まっていく、という内容になっています。
継続的に海に行く機会があり、海に関する情報には日常触れているつもりでいましたが、本書の内容にはただただ、驚いてしまいました。
同じ日本という国の中に、このような地域、そしてそこに住む人の人生がある。
「事実は小説よりも奇なり」・・・あらためて感じさせてもらえた、ノンフィクション作品でした。
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- 感想投稿日 : 2017年4月6日
- 読了日 : 2017年4月6日
- 本棚登録日 : 2017年4月6日
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